高津監督の信念を感じた選手起用

オリックスを日本一に導いた「中嶋マジック」と阪神・矢野采配に思うこと_1
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――日本シリーズは、2年連続でヤクルトとオリックスが熱戦を繰り広げましたが、2022年シーズン、この2チームの強さをどのように見ていましたか?

印象的だったのは、ヤクルトがリーグ優勝を決めた試合です。マジックナンバーは「2」で、対戦相手は2位のベイスターズ。両チーム無得点のまま迎えた、9回ウラ1アウト2塁からサヨナラヒットを放ったのは、途中出場していたルーキーの丸山和郁選手でした。

あの場面では、ほとんどの監督が、ある程度経験を積んだ選手を代打に送るのではないでしょうか。丸山選手を信頼して、そのまま打席に立たせた采配には、高津臣吾監督が選手と全力で向き合ってきた信念のようなものを感じました。

村上宗隆選手の飛躍にも似たものを感じています。試合に出始めた頃は三振が多く、守備でのミスも目立っていました。それでも我慢して起用し続けた時期があったからこそ、史上最年少となる22歳の三冠王になれたのではないでしょうか。

チームが選手をリスペクトする姿勢は、引退した内川聖一選手と坂口智隆選手に対しても表れていました。引退という重い決断を選手の口から伝えることができる環境を整えるのは大変だと思いますが、それが徹底されているのは、チームが選手をとても大切にしているからこそだと感じます。

チームは選手のことを考えて、疲労などもコントロールしながら無理のない起用をする。その上で選手は結果を出す……というように、時代とともに野球も変わってきたように思います。