〔 〕内は集英社オンラインの補注です
〔お酒に溺れながら地下芸人として十数年暮らしてきたチャンス大城だったが、千原兄弟との再会でTVへの出演が決まるなど、キャリアが上向きかける。そんな矢先に、またもや大失態を犯してしまう。〕
大失態
故立川談志師匠は「落語とは人間の業の肯定である」と言っておられました。
僕は、路上にへばりつく、業のかたまりのような人間です。自分でもよくわかっています。人様に笑っていいただく芸を持っているわけでもありません。本当は、演者であってはいけない者だと思います。
『すべらない話』も『チハラトーク』も、あのような大舞台に立たせていただいたことに、心の底から感謝の気持ちしかありません。
スタッフさん、千原兄弟さん、松本さん、本当にありがとうございます。魔が差して刑務所に入っていたとしても不思議ではないような僕に気をとめてくださって、心から感謝しています。
にもかかわらず、ちょうどそのころ、僕はまたしても大酒を飲んで失敗をし、千原兄弟さんにメチャクチャ叱られることになりました。
「せじけん」〔千原せいじが経営している飲食店〕でバイトしていた時も、酔っぱらって川に財布を投げ込んでしまったり、真冬に外で寝てしまったりして、千原兄弟さんにはえらい迷惑をかけていました。
『すべらない話』の打ち上げでは、正体を失くし、脈絡もなく松本さんに大喜利を申し込んだり、松本さんが乗り込んだタクシーにまとわりついたり、とにかく失礼なことをたくさんしてしまったようです。
芸人としてあってはならいないような大失態です。心の底から自分が嫌になりました。
そんな僕を、千原兄弟さんは本気で叱ってくれました。「チハラトーク」の舞台の上で、四百人のお客さんが見ている目の前で、「おまえ、酒やめろ!」って、せいじさんに本気で言われたのです。
なんのオチもなく、ガチに叱られました。しかも、トークライブが終了する時間まで、叱られ続けました。400人のお客さんは、シーンと静まり返ったままでした。ああ、人生終わったんやな、と思いました。