青春とは、ファミレスでダベることである

――ここまで変わらない作風を続ける秘訣は?

佐藤 もはや大作シリーズですよね。

石原 それはやっぱりね、僕は昔、5年くらいかな、こういう生活をしていたんですよ。友だちと毎晩ファミレス行って奢ってもらって。

――その頃、先生は何を?

石原 なんにもしてないです。

――すごく爽やかにおっしゃいましたね(笑)。

石原 19歳で漫画家デビューしたんですけど、そこで賞金もらってやる気をなくしちゃったんですよね。それでニートみたいな状態になって。尾山台のデニーズやロイヤルホスト、田園調布のすかいらーく、あそこら辺にずーっと毎晩いました。

ただ、当時の友だちも僕も家族ができて、ファミレスに行くことがなくなって。食事には行きますけど、ドリバ(ドリンクバー)で5時間とかはやらないじゃないですか。

ファミレス友だちがいなくなったからこそ、僕は漫画を、あの頃の夜が今も自分の中では続いているっていう感覚で描いています。幻なんです。その意識はすごくあります。

【漫画あり(4〜6話)】「先生は『THE3名様』で話が面白くなりすぎたらボツにするって本当ですか?」「“記憶に残らない”がこの作品の魅力ですから」《石原まこちん×佐藤隆太(後編)》_3

――漫画は現実の続きだと。

石原 そうですそうです。みんないなくなっちゃったんで。家族でファミレス行くのも楽しいですけど、メシ食ったら帰るじゃないですか。

――メシ食ったら帰るじゃないですか(笑)。

佐藤 我々にとってはメシを食ってからがファミレスですよね。

石原 そう、みんなすぐ帰ろうとするから。「いやいやいや、待て」と。

佐藤 今からだぞ!と。

石原 ファミレスのメシって、本当はダラダラ喋りながらつまみ食いしたいんですよ。でも家族で行くと、ちゃんと(ナイフとフォークを持って)こうですからね。で、食べたら帰る。まあ、当たり前なんですけど(笑)。

――それは喫茶店ではダメなんでしょうか?

佐藤 あー、ちょっと違いますね。

石原 ソファーですよ。なんといってもファミレスはソファーです、やっぱり。

佐藤 それに喫茶店よりは適度に放って置かれる感じもあって。店員さんの目線には弱いんです。小心者なんで(笑)。早く帰れってプレッシャーを感じると長居できない。

石原 その点、ファミレスは基本的に優しいですからね。プレッシャーをまったく与えてこない。あそこは天国です。

【漫画あり(4〜6話)】「先生は『THE3名様』で話が面白くなりすぎたらボツにするって本当ですか?」「“記憶に残らない”がこの作品の魅力ですから」《石原まこちん×佐藤隆太(後編)》_4

――今の若者も『THE3名様』みたいなことをやっていると思いますか?

石原 僕はやっていないって話をよく聞きます。でも、それがファミレスじゃなくても、こういう時間はどの時代の若者にも絶対にありますよ。

――それは何の時間ですか?

石原 青春ですよ。デートは青春じゃない。同性同士でダベるのが青春だと僕は思います。ま、僕にデートの経験がなかったということでもあるんですけど(笑)。

佐藤 でも、まさにそうですよね。