ルール違反の警察官も「幹部にも怒られたことがないので…」
警察官の草の根活動の効果だろうか、このようにヘルメット着用に理解を示す人がいる一方で、「めんどくさい」「髪型がくずれるのが嫌」といった不満があるのも現実だ。これは警察官とて同じようで、ヘルメット着用が完全に浸透しているとは言い難い。
3月29日、中央区にある警察官の家族寮から出てきた40代とおぼしき男性は、サンダル履きにダウンという軽装で自転車を押しながらエントランスから出てきた。
1歳未満の小さな子供を子守バンドで抱えて、横には5、6歳の女の子を2人連れていた。信号で1人の女の子に手を振って見送ると、もう1人の女の子を自転車の後ろに座らせた。そして自分も自転車にまたがると、小さな子供を前向きに抱っこしたまま、ヘルメットをかぶらずに発進させたのだ。
忙しい朝に、育児に積極的な父親とも映る光景だが、東京都の条例では、
「16歳以上の運転者は、幼児用座席を設けた自転車に小学校就学の始期に達するまでの者を1人に限り乗車させることができます。運転者はさらに幼児1人を子守バンド等で背負って運転できます」
となっている。つまり、子守バンドで使って前向きに抱っこして自転車に乗車することは違反であり、これはヘルメット着用以前の話だ。
3日間にわたって警視庁の独身寮や家族寮を張り込んでみた結果、プライベートでヘルメットを着用していた警察官は約1割にすぎなかった。警察官の家族にいたってはそのほとんどがヘルメットを着用していなかった。
また、子守バンドをつけて前向きに抱っこしてのヘルメット未着用運転は、前出の男性を含め2名確認した。
ある寮に住む40代警察官は声を詰まらせた。
「痛いところ突かれました。張り込まれた寮には警察幹部も多く住んでいますが、今まで怒られたことないんです。彼らは車で送迎があるから自転車は運転していませんが、まあ、努力義務ですからね……(苦笑)」
警視庁に現状に対する見解や業務外のヘルメットの着用についてどのような決まりになっているのか書面で質問状を送付したところ、「警察職員に対しては自転車を利用する際にはヘルメットの着用に努めるよう通達を発出しております。引き続きヘルメット着用促進について指導を行ってまいります」、「子供を抱っこした状態で自転車に乗ることはできません」との回答があった。
ついに始まったヘルメット着用の努力義務化だが、今後どう浸透していくか注目されている。
※「集英社オンライン」では、あなたの周りで起きたトラブル・事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
Twitter
@shuon_news
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部ニュース班