「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の主張

更に、異次元の金融緩和の継続と積極財政を主張する国会議員らはMMT派であるとし、MMTは自国通貨建なら「借金」し放題という理論だとする輩も存在する。彼らの拠点は自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」であるとする。

まず、MMTは「自国通貨建てなら借金し放題」などとは一言も言っていない。自国通貨建国債の債務不履行はありえず、自国のインフレ率、別の言い方をすれば供給能力の許す範囲内であれば国債発行による財政出動は可能であるとしているだけである。

自国通貨建て国債の債務不履行が考えられないことは、当の財務省も認めていることである(財務省のホームページにその旨記載されている)。そもそもMMTが提唱する理論は、これまで実務上行われてきている事実である。そうした輩はMMTについて解説した専門書を一冊でも読んだことがあるのだろうか?

次に、こうした国会議員らはMMTを理解し、これにも依拠しつつ積極財政を進めようとしている議員だけではなく、リフレ派の考え方に基づいて積極財政を進めようとしている議員らも含まれる。大括りで言えば、彼らはケインジアン(ケインズの経済政策理論に基づき、景気停滞期に国の財政支出を増加させて経済活動の活発化をはかる考え方を推す人たち)だ。

彼らの目的は、アベノミクスの3本の矢のうち、2本目の矢である財政政策を完遂することであり、そのために様々な理論や実務等を研究し、今の日本の国民経済を復活させ、成長軌道に戻すために必要な政策の検討・提言を行っている。極めてマトモな政策集団である。

そして、ここが重要であるが、そうした国会議員らは、常に異次元の金融緩和と積極財政が正しく、これらは永久に続けるべきだとは主張していないし、考えてもいない。2%の物価安定目標が達成され、名目3%、実質2%を超える経済成長も達成され、安定的に推移するようになれば、金融緩和も財政政策も段階的に縮小していくべきものと考えている。

つまりマクロ経済の実態を踏まえて政策手段を柔軟に考えているだけなのである。デフレの時は金融緩和と財政出動の拡大や減税、インフレの時は金融は引き締め財政支出は減らし、景気が加熱しているのであれば増税して景気を冷やすというのはマクロ経済運営の常道である。

今後もこの類の「異次元の金融緩和悪玉論」は、記事やSNS等への投稿の形で、雨後の筍のように増産されていくだろう。大手メディア掲載の記事については、財務省記者クラブ、いわゆる財研の懇意の記者に依頼することによるものが想定されるが(筆者は霞が関勤務時代に、組織として、論説委員クラスを集めて似たようなことをしたことがある)、皆様ゆめゆめ騙されませぬよう。

取材・文/室伏謙一 写真/AFLO shutterstock