「国民一人当たりの借金」は正しい表現か

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国債は日銀当座預金で取引され、その取引は日銀が管理している。その多くは国内消化であり、銀行は日銀当座預金で国債を購入するが、そこには一般国民の銀行預金は登場しない。

そして日銀は何の元手もなく銀行等の保有する国債を引き受ける。その時国債を日銀に買い取ってもらった銀行等には新たな日銀当座預金が生まれる。これが日銀による信用創造というものだ。

「無から当座預金が生まれるなんて⁉︎」と思われるのも仕方がないが、これは日常的に行われているオペレーションである。そして銀行等はこの新たに生まれた日銀当座預金を使って新たに国債を買うことが出来る。さて、もう一度聞くが、これは誰からの「借金」なのか?

財務省はよく「国民一人当たりの借金」という表現を好んで使い、大手メディアにもこの表現が踊っているが、少なくとも国民の「借金」ではないことはこれで明らかになっただろう。

では日銀が引き受けた国債は、償還期限、満期が来たらどうすればいいのかと言えば、新たに借換債という国債を発行して終わりである。よって国債の発行残高は増え続けるのが当たり前(そのこと自体を問題視しているのは日本ぐらいである)。これが国際標準、大手メディアがお好きな「グローバルスタンダード」である。

しかし、日本だけは、国債の償還費なるものを毎年度16兆円程度予算に計上して国債の償還に当てている、しかも借換債の発行と一緒に、である。こんな摩訶不思議なことをしているのは、繰り返すが、日本だけである。まさに「ガラパゴス・ルール」と言っていいだろう。