日本の受験システムは平等。努力すれば逆転もできる
――勉強をすること、学歴をどう捉えながら、虫採りを続けてきたのか。
ある程度生きてくると、運とか、人の巡り合わせとか努力ではどうにもならないことがあるとわかってきます。そんな中で日本の受験は、どんな人でもその日にテストでいい点さえ取れれば合格できる、とてもいいシステムだと感じています。大学受験では内申点を見られることもないので、高校3年になってからでも努力さえすれば、誰でも希望する大学に入って逆転することも可能です。
学歴は自分が好きなことをやる上で便利なものです。僕が東大大学院で昆虫の研究をしていることで、大目に見てもらえることもあります。例えば、虫採りを許可してもらえたり、海外の大学へ行った時にそれなりの対応をしてもらえたりすることもあります。そういった面での学歴は便利なものです。しかし、学歴があっても何かが保証されているわけではありません。僕にとっての学歴は目的ではなく手段、ツールなのかなと思います。
――貫いてきた昆虫中心の日々。これから研究を続けながら目指す道とは。
実は自分でもびっくりするくらい、将来の計画性がないんです。周りは教授になりたいとか、研究員として働きたいとか、ある意味、社会的地位を目標にしています。僕は、今はただ、こういうことをしたいという気持ちの方が大きいですね。今はメディアを通して、昆虫の魅力を世間に伝えたい。そして、あわよくば、もっと虫採りにも行きたいなと思っています。
昆虫の魅力を言葉で伝えようとしても難しいものです。例えば、僕が地球の裏側まで行って、必死に虫採りをして泣いて喜ぶみたいなストーリーを見せられたら、「こいつバカだな」と思いながらも、人を惹き込むことはできるのかなと思います。
ここに持ってきた標本は2万点ほどある中のごく一部ですが、全て自分で採っていて、1つ1つに思い出があります。買った標本にはない熱い思い、これが伝えられるかどうかですかね。
これからも虫採りを「いかにガチでやれるか」が大切なのだと思っています。
取材・文/井上幸 撮影/小松正樹