ストランディングは、ほぼ毎日起こっている
––そもそも「ストランディング」とは、どのような現象なのでしょうか。
クジラやイルカなどの海洋生物が浅瀬で座礁したり、海岸に打ち上げられ身動きが取れない状態を「ストランディング」と言います。本来の生息域から離れて河川などに迷い込んでしまうのも、ストランディングの一部ですね。日本では年間、報告例だけで約300件のストランディングが起こっているんですよ。
––年間300件も! 日本はストランディングが多い国なんですか?
特別多いわけではありません。同じ島国であるイギリスのストランディングの報告例は、年間約600件。イギリスはストランディング関連のシステムが国レベルで整えられているので、報告例も多いんです。誰にも発見・報告されずに海に戻って漂流する死体もたくさんあるはずなので、日本でも実際はもっとたくさんのストランディングが起こっているのだと思います。
––クジラやイルカは、どうして生息域から離れたところに来てしまうんですか?
正直に言うと、なぜかはわからないことが多いです。現状わかっている原因としては、「病気や感染症にかかってしまった」「餌を深追いして浅瀬まで来てしまった」「海流に乗って移動するはずだったのが時期や場所を間違ってしまった」「船に衝突して怪我をした」などいろいろ報告されています。
––生きたまま打ち上げられる場合もあるし、死んだ状態で漂着することもある、と。
はい。ただ生きている個体でも、救助体制が整っていないと、助からない場合が多いです。水族館に早めに通報がいき、スムーズに保護や治療をすれば海に戻れることもありますが、もともと怪我や病気が原因でストランディングしていることが多いので、助かりづらいんですよね。できれば元気な状態で海に戻してあげたいんですけど…。
ただ生きていても死んでいても対応は早いほうがいいので、ストランディングの情報が入ったときは基本的にすぐ準備をして、現場に駆けつけます。