#1はこちら
#2はこちら

多死社会を前に人気の樹木葬はコスパ最強?

“お墓事業”は異業種参入のビジネスチャンス? 宗教法人の経営破綻もあり得る時代、選択肢は骨を残すか煙になるか!?_1
すべての画像を見る

多死社会に向かっている都市部では、お墓の確保が大問題である。集団就職で都市部に移動した人が多い団塊の世代800万人が2040年代にかけて鬼籍に入り、田舎のお墓を他の近親者が継ぐのであれば、現在住む都市の近くでお墓を購入することになる。

ところが、首都圏はとっくに公営墓地の空きがない。民間の墓地は、抽選の上に永代供養料は200万円とも300万円以上ともいわれ、墓石の購入も必要なため経済的負担が重くのしかかる。そこでいま、注目されているのが一般的なお墓以外の形態だ。

『第13回お墓の消費者全国実態調査』(2022年/鎌倉新書)によると、購入したお墓の種類は「樹木葬」が41.5%で、3年連続のシェア1位。「一般墓石」が25.8%、「納骨堂」が23.4%と続く。平均購入価格は、「樹木葬」が69.6万円、「納骨堂」が79.4万円、「一般墓石」が158.7万円。ほかには海洋葬やデジタル葬もあり、お墓事情も多様化の時代に突入している。

日本葬送文化学会の会長・長江曜子さんは「樹木を墓石の代わりにして周りに埋葬する樹木葬が注目されはじめたのは12年ほど前で、兄弟で入る2人用、夫婦と未婚の子供が入る4人用が売れていますね。おひとり様用はまだ売れていません」と現状を教えてくれた。

各家庭の事情により一般墓石以外を選んでいる様子だが、この流れに警鐘を鳴らすのは、浄土宗の僧侶で京都・正覚寺住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんだ。

「樹木葬は野山に咲く木々といったイメージがよく、墓石もプレートだったりするのでコストもかからない。ところが、肝心の樹木は霊園の片隅にあることや、しだれ桜の下のドラム缶にお骨を入れた合葬の場合が多いんです。生前に現地を確認しなければ、ご自分がイメージするようには埋葬されません」

2000年から本格的に広まった墓じまい(墓石を撤去し、墓所を更地にして使用権を返却すること)にも疑問を呈す。

「自分は“墓がいらない”から撤去するというのは、自分勝手だと思います。子供が先に死ぬ場合も、孫が先に死ぬ場合もあります。その時、同じように言えるのでしょうか? 継承者がいるにも関わらず墓じまいするのも考えもので、いざその時に困るのは自分です。先祖がいるからこそ自分が存在するんです。お墓が必要になった時に入る場所がないという、想像力の欠如による墓じまいのトラブルは枚挙にいとまがありません」 (前出・鵜飼さん)