バスクと日本の相性のよさ

「ラ・ヴィーニャ」のチーズケーキの特徴は、表面が黒くなっている点だろう。表面に塗られたキャラメルをオーブンで黒く焦がし、香ばしさを出しながら、中は濃厚なチーズを舌の上でとろけさせる。

ベイクドチーズケーキの一種で、改良に改良を重ね、今の体裁に辿り着いたという。チーズの風味が強いだけに、ワインと一緒にも楽しめるのが特徴だ。

材料はフィラデルフィア産のクリームチーズに卵、砂糖、小麦粉(薄力粉)、生クリーム。特別なものは使用していない。220度のオーブンに入れて焼き上げ、粗熱を取ったあと、冷蔵する。

その過程で外側はカリっとなり、中はトロトロの食感が生み出される。その絶妙な加減に、おいしさのポイントはある。

日本人はバスクと相性が良く、食事だけでなく、サッカーもゆかりが深い。

例えば、J1のスペイン人では半数近くの選手、監督がバスク人である。フリオ・サリーナス、チキ・ベギリスタイン、ヨン・アンドニ・ゴイコチェア、マルケル・スサエタ、ハビエル・アスカルゴルタ、ミゲル・アンヘル・ロティーナ、ファン・マヌエル・リージョなど、一様に貢献度も高い。きっと肌が合う感覚があるのだろう。

一方で、過去にスペインで最も活躍した日本人選手は、バスクのエイバルでプレーした乾貴士だろう。スペインの他の地域では日本人選手に懐疑的なところがあるが、バスクでは親しみを持って受け入れられた。

その意味でも日本人がプレーし、生活するのに適している土地と言える。やや伸び悩んでいた久保も、ラ・レアル移籍によって一気に才能が開花した気配がある。

バスクでは、様々な種類のチーズケーキがある。この食べ歩きだけでも、多くの日本人はバスクの深淵に好意を持つことになるだろう。

取材・文/小宮良之