“バスクチーズケーキ”が生まれた背景
そこでスイーツを扱う店やレストランのデザートで、バスクチーズケーキがあるか、試しに聞いてみたが、みな首をかしげるばかりだった。
「うーん、ただのチーズケーキならあるわ。バスクケーキもあるわよ。けど、バスクチーズケーキはないわ」
店員はなぞかけのように言った。
バスクはフランスにまたがる地域だが、バスクケーキはフランス・バスク発祥で、フランス語で「ガトー・バスク」とも紹介される。
起源としては18世紀ごろ。当初はフルーツケーキに近く、それがアーモンドとバターをベースにした形でバスク全域に広まっていったという。
市内にあるケーキ屋の店員にレシピを聞くと、なかなか手が込んでいた。中にカスタードクリームを入れたり、フルーツを入れたりと、バリエーションも多い。
店員に言われるがまま、シナモンが入ったバスクケーキを食べたが、レモンの香りも微かにして、確かにおいしかった。庶民的な値段で一切れ2ユーロ。約240円の小さな幸せだ。
同時に、バスクのチーズケーキが「バスクチーズケーキ」として日本で売られたからくりも明らかになった。
サンセバスチャンの旧市街に「ラ・ヴィーニャ」という老舗レストランがある。そこで出されるデザートのチーズケーキが10年ほど前から評判を呼び、人気を博していた。すると、地元に似たようなチーズケーキを作るお店が増えたという。
というのも「ラ・ヴィーニャ」がレシピを公開しているからで、必然的に輪が広がったのだ。この人気スイーツが「バスクチーズケーキ」という商品で日本に持ち込まれるのは、時間の問題だったと言える。