どれも一皿、日本円で約300円
スペインの北に位置するバスク自治州、ギプスコア県の都、サン・セバスチャン。そこは「世界一の美食の街」と言われる。
町中に連なるバールが出すピンチョス(もともとは串や楊枝で刺した料理に使われたが、一口サイズのつまみ)を食べ歩くことで、その意味を十分に感じられるだろう。
旧市街での個人的イチオシは、”お化けマッシュルーム”。ガーリックバター、生ハム、マッシュルームのハーモニー。その味がしみ込んだパンも舌が唸るほどうまい。いくらでも食べられるが、はしごが基本なので次の店へ。
近くに「Mari Juri」のうまいバールがある。ピーマン、サーモン、アンチョビをパンの上にのせたもので、絶妙な味わい。赤ワインが進む逸品で、魚介は他にもバカラオ(タラの塩漬け)やイカの鉄板焼きなど、海沿いの町だけにレベルが高い。
季節が秋なら、「Setas」もおすすめだろう。採れたてキノコをオリーブオイルで炒め、卵黄をちょこんと乗せる。食べる直前に黄身をとろりとさせ、キノコと一緒に口に運ぶと天国だ。
季節に関係ない一品としては、「Gilda」がいい。青唐辛子酢漬け、アンチョビ、オリーブを串に刺した伝統料理。酒量が増すはずだ。
お店同士の競争は激しい。どれも一皿、一串、日本円で300円程度。安く、うまく、楽しい。美食の町の神髄だ。
しかし美食の原点は、さらに奥にあった――。