ドイツ戦で日本代表が模範とすべきゲーム

その要素を具体的に落とし込むなら、以下の三つとなる。

「プレッシング、リトリートの併用で執拗な守備からのカウンター」
「ハードワーク」
「セットプレー」

プレッシング、リトリートを繰り返し、それぞれが球際で勝てないまでも負けないことが重要だ。上下動を繰り返しながら、カウンターで脅かし、セットプレーを取れるか。そうして0-0で推移できたら、交代選手の投入でゴールに持ち込むこともできるかもしれない。

例えば前田大然、伊東純也のような選手を消耗戦に使い、鎌田はできるだけ力をセーブさせ、上田綺世、久保建英で一気に勝負をかける――。

ただ、この仮説はあくまで楽観論に基づいている。

もし、例えば遠藤航が脳震盪の影響で万全ではなかったら、中盤の守備ラインは保てない。代わりとなるべき選手は、いないも同然だ。相手が開始15分で一気に強度の高い攻撃を仕掛け、それで失点した場合、すべての計算が狂う。カウンターは成り立たず、焦らされながら出ていったところを、再び失点するかもしれない。

ただ、それでも屈しないことだ。どの仮説であれ、偶然性を孕んでいる中、最後まで戦い抜くことでゲームは動く。

例えば、9月27日にネーションズリーグでイングランドはドイツと対戦しているが、守勢に回った戦いで、凡ミスからPKを与えて失点。ミスから2点目も失い、万事休すのはずだった。

しかし交代選手が奮起し、3点を奪って逆転。結局、ドイツの交代選手に失点を食らい、3-3のドローとなったが、闘志を持続させて相手の虚を突けた。

今のドイツは好調とは言えない。ここ7試合で2勝1敗5分け。11月17日のオマーン戦も1−0の辛勝で、高いボール支配率を誇りながらも攻め切れなかった。

今年9月のネーションズリーグでは、ホームで0-1とハンガリーに敗れている。CKをニアで合わされて失点。これで焦りが出たのか、ポゼッション率は7割以上に達しながら、攻撃にリズムが出なかった。

これこそ、森保ジャパンが模範とすべきゲームと言える。

ドイツは無敵ではない。カウンターの対応で後手に回ることがしばしばある。一方で、相手をノックアウトできるストライカーが不在で(エースのティモ・ヴェルナーもケガでW杯欠場)、決定打がないのも深刻な問題だ。

とにかく森保ジャパンは粘り強く戦うしかない。前線からボールを追い、しつこく守り、奇襲を浴びせる。創造性は乏しく、運を天に任すところもあるが、望みを捨てずに戦うことだ。

取材・文/小宮良之