「全然、面白くなかった」頃の岡田ジャパンの再現
選手の良さを引き出すのではない。守りありきで、相手に自由を与えないよう、とにかくハードワーク。リスクをかけず、カウンターを狙い、「石橋を叩いて渡る」リアクション戦術を敢行する。それを運用するための26人のメンバーだ。
森保ジャパンは、とにかくプレッシングをかける。はまらなかったらリトリートし、辛抱しながら隙を窺い、消耗戦に持ち込む。自分たちがボールを持ってリズムを作ることは二の次で、「負けない」ための戦いに終始するのだ。
2010年南アフリカワールドカップ、岡田武史監督が率いてベスト16に進出した日本代表にコンセプトは近いだろう。今回はハイプレスも準備しているはずだが、強豪にはなかなか通じないだろうし、逆襲を受けるリスクもある。結局は「籠城出撃戦」になるだろう。
かつての岡田ジャパンでは、田中マルクス闘莉王、中澤佑二のセンターバックの前に、アンカーで阿部勇樹を配置。中央の守りを分厚くし、サイドの「城門」も閉じ、全員でブロックを作った。頑強に城に立てこもりながら、機を見て奇襲をかけ、敵の本営を脅かした。
「全然、面白くなかったよ」
岡田ジャパンでFWの一角を担った大久保嘉人は、徹底した堅守カウンターの戦いをそう振り返っている。
「でも一発勝負と決め込んでいたから、楽しくなくても問題なかった。選手は監督の決めた戦術に合わせて動くべきで、それを徹底的に貫いた。そこまで割り切らんと、あそこまで俺はディフェンスしない(苦笑)。
前でボールを呼び込みたかったけど、突破されるのを承知で戻らないわけにはいかないっしょ。ひとりでもわがままなプレーをしたら破綻していた」
森保監督は、その再現を目指すだろう。いや、そうならざるを得ないのだ。
サッカーは最も多く番狂わせが起きるスポーツで、彼我の戦力差を考えた場合、「籠城出撃戦」は定石と言える。その運用で求められる三つの要素がある。
「速さ、もしくは強さ」
「連続性」
「献身性」
単純に身体的な速さ、強さ、あるいは高さでも完全に負けられない。どこまでも相手に食いつき、チャレンジ&カバーを一瞬でも怠らず、長い守勢の中でも、カウンター攻撃にギアを入れる連続性が求められる。かなりの肉体的、精神的な消耗があり、全員の犠牲精神がなければ綻びが出る。なにしろ、耐え忍んで一撃を狙う戦い方だ。