不安を口にする露店のおばちゃんたち

奈良公園内に「しかせんべい」の自販機登場で、露天のおばちゃんたちが廃業の危機⁉_4

「まだ2台だけだから黙っているけど、今後どんどん設置数が増えれば、わたしらの仕事がなくなってしまうのではと心配です。少ない年金の足しになればと、鹿せんべい売りに精を出してきたんですけどね」

別のおばちゃんもこう困惑する。

「コロナが落ち着いて観光客が戻ってきたと喜んでいたのに、ライバルの自販機が登場するなんて。県はわたしらのような零細な露店販売員を減らそうとしているんでしょうか?」

はたして、自治体は露店のおばちゃんたちを駆逐しようと画策しているのか? 自販機を設置した「奈良県ビジターズビューロ―」に露店側の懸念をぶつけてみた。
すると、答えは以下のようなものだった。

「露店と自販機がライバル関係? その心配はありません。自販機の鹿せんべいは行商組合から仕入れるので、売上はすべて行商組合の利益、つまり露店のみなさんの利益になります」(奈良県ビジターズビューロ―・中西康博専務理事)

ということは、自販機設置の動機はやっぱり、露店が営業していない早朝や夕方に観光客が鹿せんべい以外の食物を与えることを防ぐためだった?

「もちろん、それも狙いのひとつですが、最大の目的は啓発です。奈良公園の鹿を未来永劫、守ってゆきたい。そのためには自然の草を食べてもらうのが一番で、もし与えるとしても害のない鹿せんべいしかあげないでほしいということを広く啓発したいんです」(前同)

中西専務理事には忘れられない光景があるという。