中間選挙とアメリカの黄昏

なぜバイデン大統領が明確な不介入メッセージを口にしたのかは不明だが、軍事介入を簡単にできない理由は2つ考えられる。

1つ目は中国だ。トランプ時代から引き続き、アメリカはグローバルな覇権を争う相手として中国に的を絞ってきた。そのための軍事・外交的リソースをアジアに集中させようという矢先にウクライナ戦争が勃発すれば、アメリカは対ロシア、対中国という二正面での対応に追われることになる。これではいくら超大国アメリカといえども限界がある。かりにロシアと直接衝突すれば、中ロ関係を緊密化させるだけだ。

2つ目は国内政治と世論である。バイデン政権は「中間層の外交」(foreign policy for the middle class)を標榜している。実態はやや漠としているが、つまるところ庶民、とくに中西部の有権者のプラスにならない外交政策はしないということだ。

一部軍産複合体などは別にして、戦争は一般のアメリカ人の生活にはプラスにならない。
20年の大統領選挙でバイデンがトランプを破った最大の要因は、中西部激戦州での白人中産階級の支持の差だった。特に無党派の白人だ。

その無党派層が今、バイデン政権から離れている。平均支持率は40%だが、無党派層では30%台にすぎず、しかも下降気味だ。すでに今秋の中間選挙は黄色信号が点灯していると見るべきだろう。

仮にウクライナに地上兵力を送るとなれば、そう簡単には撤退できない。ロシアとの戦いは長期化し、平均的アメリカ庶民生活を苦しめることは必至だ。

しかも国内には厭戦気分が広がっている。昨夏のアフガニスタン撤退もその帰結だが、湾岸戦争から数えると30年以上も中東での戦争に関与してきた徒労感マックスな状態がアメリカ社会にはある。AP・NORCの世論調査でも「ウクライナで積極的な役割を果たすべき」としたアメリカ人は4人に1人(26%)にすぎず、5人に1人(20%)は「まったく関与すべきでない」と回答しているほどだ。

ちなみにこの世論調査は2月24日の発表で、ロシアによる侵攻当日にあたる。バイデンの派兵否定発言の背後には対外関与に背を向ける国内世論が深く影を落としていることは否定できない。

それにしても、世界最強の軍事超大国アメリカのリーダーが、公然と武力行使を否定して自らの手を縛り、開戦後に慌てて支援をする様はまさに「アメリカの世紀」の黄昏を思わせる出来事といえるだろう。

写真/AFLO