女子プロサッカー「WEリーグ」が、開幕初年度のシーズンを終えた。同リーグは日本女子サッカーのレベルアップとともに、ジェンダー平等社会の実現を目指して様々な理念推進活動を行なってきた。
妊娠・出産への配慮を選手の雇用契約に加えたほか、新規の女性層が足を運びたくなるようなスタジアムの環境作りにも力を入れている。
また、海外に比べて女性の指導者や審判が少ない現状から、現役選手やOGに資格取得をサポートするなど、活躍・成長の場を提供している。
だが一方で、性別によって機会を限定する風潮に対して、現場からは疑問の声も聞こえてくる。海外のトップリーグが急激なレベルアップを続ける中、WEリーグに与えられたもう一つの使命は、「世界一の女子サッカーリーグを目指す」こと。そのビジョンと女性活躍推進の社会理念を、両立させることは果たしてできるのだろうか。
社会理念と競技力向上は両立可能か
WEリーグが掲げる「ジェンダー平等社会」の実現は、プロ化によって競技力が向上し、選手たちが輝いてこそ説得力を持つ。だが、現状はプロで指導できるライセンスを持つ女性指導者が少なく、初年度はWEリーグ11チーム中、女性監督はわずかひとりだけだった。
また、クラブの参入基準として「運営法人の50%以上を女性とする」ことや、「クラブの意思決定に関わる者のうち、少なくとも1人は女性とすること(取締役以上が望ましい)ことなどを求めている。
報酬や大会賞金の格差など、男性優位が根強いスポーツ界の風潮を変えていくために、こうしたクォータ制の導入は一定の効果をもたらすと思われる。
一方で、WEリーグの発展を考えれば、重要なポストこそ、性別ではなく能力が重視されるべきではないだろうか。現場との緻密なコミュニケーションの中で、JFAやリーグの柔軟な対応が期待されている。
――ジェンダー平等が世界的な潮流となった中で、ヨーロッパの女子サッカー界は大きく発展を遂げています。WE リーグが掲げるビジョンや社会理念は浸透してきたと思われますか?
WEリーグは参入条件に、女性を一定数入れるという要件がいくつかあって、それはリーグの理念にも通じることです。今後は、その項目を達成していないチームとコミュニケーションをとりつつ、達成に向けて尽力していきたいと思っています。将来的には、引退した選手がセカンドキャリアでクラブの役員を目指せるようになるのが理想ですね。
――「世界一の女子サッカーを」というビジョンも掲げているので、競技力の向上も重要なタスクですね。
フットボール事業の方では、集客で目に見える結果が出せていません。本来は社会事業とフットボール事業の両方が振り子のように揺れていく形にしなければいけないと思っていますし、来季はフットボール事業の方にもっとリソースをかけたいですね。