極右第四波の到来

第二次世界大戦後のヨーロッパに極右が台頭したのは、現在が初めてではない。戦後の極右の台頭はしばしば「三つの波」として整理されてきた。順番にその流れを見ていこう。

第一波: 第二次大戦直後に現れたネオ・ファシズム。元ナチス幹部やヴィシー政権のような旧体制の残党が体制復活を試みたものの、社会の強い拒絶に遭い、広がりを持つことはなかった。

第二波: 1950年代以降、フランスのプジャディスト運動(*6)を典型とするような、国家や税制に対する反発を基盤にした極右ポピュリズムが台頭。いずれも短命に終わった。

第三波: 1980年代に始まり、フランスの国民戦線の躍進が象徴するように、移民受け入れを拒否する新党が各国で登場した。しかし、当時の他政党はこれらの勢力を「異物」として遠ざけ続け、西欧諸国で政権に加わったのは1990年代のイタリア北部同盟など、ごく限られたものだった。

さらに2000年代以降、極右は「第四の波」へと移行したとミュデは指摘している。その背景にはグローバル化、2008年の金融危機、2015年の難民危機、テロへの不安といった出来事がある。今日ではEU加盟国の大半に極右政党が存在し、さらに従来の中道右派が極右的テーマを取り込む傾向も強まっている。

この伝統的右派と極右の「ハイブリッド化」はフランスに限らない。イスラエルのリクード党、アメリカの共和党、オーストリアの人民党もその一例である。右派と極右の接近は連立参加や政策議題の右傾化として現れ、結果として「極右の主張」が政策の中心に滑り込む経路が拡大した。移民はかつてのように経済成長を支える存在としてではなく、安全保障やアイデンティティへの脅威として語られるようになった。

2025年6月、フランスでの大規模集会に集まったヨーロッパ各国極右政党の党首ら フランス・国民戦線の党首であるジョルダン・バルデラやマリーヌ・ルペン、ハンガリー首相のオルバーン・ヴィクトルらの姿が見える 写真:Abaca/アフロ
2025年6月、フランスでの大規模集会に集まったヨーロッパ各国極右政党の党首ら フランス・国民戦線の党首であるジョルダン・バルデラやマリーヌ・ルペン、ハンガリー首相のオルバーン・ヴィクトルらの姿が見える 写真:Abaca/アフロ
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そして第四波における極右は、移民だけでなく、安全保障、腐敗、外交政策を重要争点として掲げ、具体的には以下のような傾向に収束する。

①移民: 極右は「大量移民は国家の存続への脅威」と主張する。極右の中でも過激な勢力は「白人絶滅(white genocide)」という陰謀論を語る。特にフランスのルノー・カミュによる「大置換(Great Replacement)」 (*7)論が広まり、移民は進歩派エリートが意図的に推進しているとされ、またしばしばジョージ・ソロスが「黒幕」だともされる。現代の主要な「敵」は「イスラーム教徒」であり、国内外の陰謀論と結びつけられる。

②治安: 極右は治安を広く解釈し、文化的・経済的脅威も「不安」と捉える。犯罪は「移民の犯罪」として語られ、それに対応する政治家の「弱腰」が非難される。また、テロリズムもイスラーム移民と結びつけられる。これらの点から、治安問題の究極の解決策は「移民の停止」であるとされる。

③腐敗: 腐敗は主に「エリート」の問題とされ、進歩派・知識人・ジャーナリストなどが「国を堕落させる」と批判される。しばしば「文化マルクス主義」などの用語が使われ、リベラルで進歩的な運動を陰謀視すると同時に、その起源をユダヤ系知識人に結びつけることで反ユダヤ主義的含意を帯びる。さらに、選挙不正も語られる。

④外交政策: 国際関係はゼロサムとされ、「自国第一」が基本である。超国家組織(EUや国連)は敵視される。東欧では領土回復要求(ハンガリーのトリアノン条約、イスラエルの「大イスラエル」構想など)が重要なテーマである。

⑤宗教: 宗教の位置づけは地域ごとに異なる。西ヨーロッパでは急進右派はむしろ世俗的だが、東欧・米国・インド・イスラエルなどでは宗教が強調される。イスラームは「他者」とされる一方、キリスト教やヒンドゥー教、ユダヤ教は「民族アイデンティティ」の守り手として利用される。

*6 プジャディスト運動とは1950年代にピエール・プジャドが率いた小商人・職人中心の反増税運動。この運動出身で、若干27歳にして当時最年少の国民議会議員に初当選したのが、後に国民戦線党首となるジャン=マリー・ルペンである。
*7 ヨーロッパの「先住の白人系住民」が、大規模な移民(特にムスリムやアフリカ系移民)によって「置き換えられる」と主張する陰謀論。

ファシズムは最も無害に見える形で戻ってくる

上記の争点は、今日台頭する日本の参政党の主張を見ていてもどこか既視感があるものではないだろうか。この判断は読者に委ねるが、とにかく重要なのは、極右は「民主主義の外部から暴力的に迫る脅威」ではもはやないということだ。極右は多様な争点を取り込みながら、民主主義の内部に入り込んで、その影響力を拡大してくる。

「ファシズムは最も無害に見える形で戻ってくるかもしれない。」とイタリアの思想家・ウンベルト・エーコは警告した。私たちの義務は、世界のあらゆる場所で、日々、ファシズムの萌芽を暴き出し、その新しい形をひとつひとつ指さして示すことだ。かつての極右は「悪魔化」によって社会の周縁に追いやることができたが、もはやその手法は十分に機能していない。

しかしその一方で、フランスでは2024年の国民議会選挙に見られたように、対極右のブロック構築「共和国戦線」や、極右第1党を予測した世論調査を覆し、左派の新人民戦線が首位に立つといった、数々の試みがなされ、成果を残していることも確かだ。そしてこうした戦略を可能にしているのが、これまで蓄積されてきた極右分析の知的資本に他ならない。

なぜ極右の躍進は止まらないのか。彼らの戦略とは何か。そして私たちは、いかにしてこの潮流に抗うことができるのか。――こうした問いへの答えを、今後もフランスから探っていきたい。

参考文献

Cas Mudde, The Far Right Today, Polity Press, 2019.
Cas Mudde, Populist Radical Right Parties in Europe, Cambridge University Press, 2007.
Jean-Yves Camus, Nicolas Lebourg, Les Droites extrêmes en Europe, Éditions du Seuil, 2015 (『ヨーロッパの極右』みすず書房、2023)
Cécile Alduy, Stéphane Wahnich, Marine Le Pen prise aux mots: Décryptage du nouveau discours frontiste, Seuil, 2015.
Pirro, A. L. P. “Far right: The significance of an umbrella concept.” Nations and Nationalism, 29(1), 101–112, 2023.
水島治郎『ポピュリズムとは何か』中公新書、2016年。
Le Monde, “Une hybridation de la droite traditionnelle et de l’extrême droite est en cours dans de nombreux pays,” 2023年2月1日.