HBC取材班が発見した追加遺留品

間を置かずして行なわれた7月28日午前11時の捜索で、さらなる遺留品が発見される。カメラの三脚、布切れ、バスケットシューズ、ティッシュペーパー、そして頭蓋骨。

バスケットシューズは左足のものでメーカーはリーバイス、緑色でサイズは27㎝。三脚はアルミ製で高さは81㎝、東京の写真用品メーカー「LPL商事」製のもので発見される以前から全国に出回っていた。布切れは長さ約30㎝、幅約22㎝で灰色。

朝から4人がかりで行なわれた捜索だったが、道警曰く「ヒグマの足跡がそこらじゅうにあるから危険」と判断、午前中のうちに捜索を打ち切った。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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この時点で、発見された遺留品は前述の遭難者、愛知県江南市の会社員・Iさん(25)であるとの見込みが濃厚となった。

Iさんはいわゆる“オタク”だった。

発見されたテープも1本はアニメ『超時空要塞マクロス』や『魔法のプリンセス ミンキーモモ』の主題歌を録音したもの、またある1本は『マクロス』について対談している内容(註記:北海タイムスによれば「女性ディスクジョッキーによるラジオの深夜放送のようなもの。これは実際のラジオ番組ではなく『マクロス』の映画のワンシーンか、レコードなどから録音したものとみられる」とのこと。現物を確認できなかったため詳細は不明)を録音したものであり、Iさんの同僚や両親などからも彼の嗜好が“アニメ”“鉄道”“写真”であったとの裏づけが取れた。

この属性がのちにコメンテーターたちの“ゲンロン”対象として格好の標的となった。

しかし、Iさんであったなら、なぜ風倒木を苦労して組み上げるようなことをしたのか?このような疑問がほうぼうで上がり始める。

25歳とまだ若く、推定2〜3日もの時間をかけて「SOS」をつくる体力があるのならば、来た道を引き返せばよいではないか――そんな素朴な疑問だ。

情報が少ないなか、女性の人骨を絡めてさまざまな推測がさまざまな紙面で展開されたが、極端なモノでは「オタクだから」で済ませている乱暴な識者もいた。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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だが、この“なぜ引き返さなかったのか問題”に関してはすぐさま「実証例」が提示されることとなる。

翌29日。HBC(北海道放送)の取材班がネタ欲しさに現場に急行。そこで二重のスクープを成し遂げる。

まず、HBCの取材班4名はSOS地点にて、免許証、印鑑、ユースホステルの会員証など二十数点を発見。

身分証がIさんのモノで、先立って発見されていたリーバイスの靴箱が自宅にあったこと、I姓の印鑑、カセットテープに書かれていた曲目リストの筆跡と入山届に書かれた筆跡が同一であると認められたこと――などから、道警当局は遺留品のほとんどがIさんを指し示しているとし、「SOS地点でSOSを組み上げ、いずれかの時点でテープを録音し、そのまま救助されることなく亡くなった」という流れを見立てた。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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だが、この時点でも「女性の人骨」については謎が残っていた。

頭骨も女性と鑑定されたうえ、彼女の血液型はA型。IさんはO型。しかも周辺に女性の行方不明者はおらず、遺留品も女性由来と思しきものが見つからない――。

あまり引っ張っても生産的ではないので、ネタバレしてしまえば、このミステリー騒ぎのひとつの燃料となったこの「女性人骨と遺留品の食い違い」は“勘違い”だったのである。

文/松閣オルタ

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