入院いやや
9月4日月曜日。
1対1、続く。歩行器でトイレに向かいつつ、なにかぶつぶつ言い続けているので、耳をそばだてると、「入院いややなあ」「入院いややなあ」「入院いや……」
独り言を繰り返していた。小声で。どこか歌うように。かわいいような、こわいような。これは私に聞かせる目的のモノローグではない。
やはり家にこのままいたいんだろう。でもいずれ病院に行かねばならないのか……行ってしまったら、また病院食で、ひとりになって、そのままそこで? ……いやだいやだ。
薬の加減か魂の叫びか、子どもに帰ったのか。歌や念仏のようでもあるこんなつぶやきを続ける母。寄る辺ない言葉に初めて触れて、胸が苦しくなった。
またお粥をちょっと。フナ寿司のお湯がけはもう食べなくなった。私は餃子とキリン「秋味」。
新聞はとうに読まなくなり、テレビもいつしか見なくなった。テレビは隣の寝室からこちらに移し、ブルーレイ再生機もつないで、見たがっていた古い映画……『美女ありき』や『或る夜の出来事』『毒薬と老嬢』なんかを用意したのだが、結局見ることはなかった。
大好きなヴィヴィアン・リーの『風と共に去りぬ』の映画には、素晴らしく面白いメイキングがあって、それもぜひ見せてあげたかったのに。













