母の最期と父のこと

この先どこで母の最期を看取るのか、それまではどこで介護や医療を受けるのかについても考えないといけません。

実家の堺で看取るか、それとも施設や緩和ケアの病院など、別の場所か。

いずれにせよ、私自身がかかわるほかなさそうです。

長女は関西に住んでいましたが、三女・四女は東京在住、京都に住み、在宅医療をしている私がかかわらざるをえないと腹をくくりました。

実はこの前の週に私は、私の自宅のある京都での療養も視野に入れて、サービス付き高齢者向け住宅の見学に行っていました。

サービス付き高齢者向け住宅、通称「サ高住」とは、高齢者向けにバリアフリー構造となっていて、安否確認や生活相談などのサービスを受けることができる賃貸住宅のことです。

サ高住によって条件や環境は違いますが、あくまで「賃貸住宅」なので施設に比べて自由度は高いのが特徴です。

このサ高住のパンフレットも渡しつつ、両親には「こういうところに引っ越すと安心してお母さんの介護サービスも受けられるし、お父さんの透析治療もしやすいよ」と説明しました。

ところが、「おいおい時期が来たら考える」と軽く返されたのです。

「おいおい時期がって……。オイオイ、その時期が今なんだってば!」と心の中でつっこみつつ、この二人は本当に困らなければ考えないし、私が何を言っても無駄ということもわかっています。

結局、それ以上何も言わず、パンフレットだけを置いてきました。

また、選択肢の一つとして、私の自宅に連れ帰ることも考えないわけではなかったのも事実です。

ただ、一瞬考えはしたものの、すぐにやめました。母が亡くなったあと、一緒についてきた父をわが家から追い出せなくなることを考えると……その最悪の選択肢はすぐ却下となったのです。

母に取って最善の最期を迎えるには(写真/shutterstock)
母に取って最善の最期を迎えるには(写真/shutterstock)
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毒親を在宅で見送った緩和ケア医が伝える 関係のよくない親を看取るということ
岡山容子
『毒親を在宅で見送った緩和ケア医が伝える 関係のよくない親を看取るということ』
2026/2/20
1,870円(税込)
232ページ
ISBN: 978-4799332498

関係のよくない親の介護や看取りが不安なあなたへ。
毒親だった母を在宅で見送った医師による体験談と看取りの知識&心得がわかる本

40代から60代にかけて直面する、親の老いと死。
親との関係がよくても不安になる人も多いのに、関係のよくない親なら、なおさら不安や怖い気持ちになるのも当然です。

・親との関係がずっと悪く、できることなら関わりたくない
・親が苦手で、なんとなく実家とは距離をとっている
・「毒親」とまでは言えないが、付き合いづらい親だ
・親がしょっちゅう人間関係やお金のトラブルを起こす
・親の価値観を、今でも押し付けてきて嫌な思いをする

著者は、京都で訪問診療・緩和ケアに携わる医師であり、真宗大谷派で得度した僧侶でもある岡山容子氏。

数多くの看取りに立ち会ってきた専門家でありながら、自身もかつて「毒親」だった実の母を、長年の葛藤の末に看取った経験をもっています。

(本文より一部抜粋)

親が死んでしまったあとも、あなたの人生は続きます。
そのときに、苦しんでしまったり、大きな後悔が襲ったりすることが少ないよう、できたらお別れはしたほうがいいとおすすめしています。

ただ、そのためにあなたが親との関係で最後の最後までつらい思いをするのならば……捨ててもいい、とも思っています。

親子の形はそれぞれ、見送り方もそれぞれです。
正解などはないのです。
そして「あなたはどうするのか」ということです。

それを、みなさんそれぞれに考えるヒントにしてもらうために、本書を書きました。

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