「生きるために死ぬことを受け入れる」

彼の綴る「note」には、「私なりの癌との向き合い方」というタイトルの文章がある。その中に、こんな言葉が綴られている。

《生きるために死ぬことを受け入れる》

一見すると矛盾するような言葉だが、福積さんは、その言葉に込めた思いについて、こう話した。

「日々、がんと闘っていく中で、どうしても根底として、死ぬのが怖い。まだもっと生きる予定だった。周りは誰も死んでいない。でも、その怖さを乗り越えるために大切なのは、『受け入れること』なんじゃないかなと僕は思うんです。『怖い、怖い、怖い! 死ぬの怖い、死ぬの怖い!』って、ずっと縮こまって生きるのでは、家族のために闘えないなと」

死ぬ時は、死ぬ。だったら、今この瞬間、前向きに明るく闘う。怖さを乗り越えるために、死を受け入れることを選んだ。しかし、死生観を語る福積さんの表情は決して暗くない。広島弁に持ち前の愛嬌を添えて笑う。

福積さん一家。おそろいのニット帽での1枚(写真/本人提供)
福積さん一家。おそろいのニット帽での1枚(写真/本人提供)

彼が笑って生きる理由。インタビュー中に何度も「家族の存在」に救われていると語る福積さん。妻、息子の「青空(そら)」くん、愛犬の「ハナビ」、そして今度産まれてくる赤ちゃん。家族の話を優しい声色で話す福積さんに赤ちゃんの話を聞くと、すでに名前も決めているという。

「もともと、青空(そら)とハナビ、どちらも“空”にまつわるので、赤ちゃんも空に関係するような名前を…とは思っていました。

僕の、この生きる、この暗い夜空に光っとる目印じゃないですけど、僕を導いてくれるような、そんな意味を込めて星奈(せな)っていう名前にしようかなと。がんという真っ暗な世界で輝いてくれる星のように」

絞り出すようにゆっくりと福積さんは続けた。

「会いたいし、抱っこしたいし、誕生日もずっと祝っていきたいし、小学校の入学式も卒業式も見たい。まだまだいろんなことをしてあげたい」

子どもたちにできることを全て尽くしたい。父親として、どのような背中を見せたいか――、そう問いかけると、こう答えた。

「僕が痛みでうめいていたりすると、息子は不安そうな顔を浮かべるんですね。妻と僕が急遽病院に行くことになった時、『ママ、病院に行って、おらんようなったりせんとってね』って。

そういうのを見ると、かっこいいパパじゃなくて、ずっと一緒に居てあげられる、何でもないパパになってあげたい。他の家庭と変わらない、普通の、何事もないパパで」