スポーツ中継の変革…それでも地上波テレビに残された強み

日本国内で1790万人が視聴ーーこの数字が衝撃的なのは、単なる“大ヒット”で片づけられないからだ。

これまでNetflixは、日本国内で個別作品の細かな通算ランキングを地上波の視聴率のようには常時公表してこなかった。だが、今回わざわざ「史上最多」と打ち出したこと自体、同社がこの記録を別格と見ている証拠だろう。

つまりWBCは、配信でも「国民的同時視聴」が成立し得ることを証明したのだ。

もちろん、Netflixはこれまでも日本発コンテンツで結果を出してきた。公式に発表された近年の作品の中では、映画『シティーハンター』が2024年上半期に1600万ビューと世界的ヒットとなり、『地面師たち』が2024年下半期に1200万ビューを記録している。

『地面師たち』の作者・新庄耕氏。2024年の集英社オンラインの取材でフィッシング詐欺に遭っていたことを明かした(写真/集英社オンライン編集部)
『地面師たち』の作者・新庄耕氏。2024年の集英社オンラインの取材でフィッシング詐欺に遭っていたことを明かした(写真/集英社オンライン編集部)
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だが、これらはあくまで見逃しても“あとからいつでも見られる”作品だった。今回のWBCは違う。スポーツ中継は、その瞬間に見なければ熱が逃げる。だからこそ、これまで地上波テレビが主軸となっていた。ところが、その牙城にNetflixが真正面から踏み込み、しかも結果まで出してしまったのである。

テレビ関係者が戦々恐々とするのも無理はない。今後、「スポーツ中継」において放送業界では何が起きるのか。在京キー局のディレクターが言う。

「まずひとつは、スポーツの放映権争奪戦はさらに過熱するでしょう。例えば、直近で控える大きなスポーツ興行として5月2日に東京ドームでボクシングの井上尚弥 vs 中谷潤人があります。これはNTTドコモが運営するLeminoで生配信されます。

配信大手は広告収入だけでなく、会員獲得や解約防止まで見込んで大型投資ができますし、地上波より資金もケタ違いなので放映権争奪戦になれば地上波は相手にならないでしょう。

さらに、地上波の役割そのものが変わる可能性があります。試合そのものの放送権を押さえられないなら、速報、舞台裏、独自解説、特番といった“周辺戦”で勝負するしかない」

そして、視聴者の習慣の変化も見過ごせない。テレビの前で放送開始を待つ時代から、アプリで通知を受け、見逃しも関連映像も一気に回遊する時代へ。主役はもはや「チャンネル」ではなく「プラットフォーム」になりつつある。