会場からの質問

──おふたりとも旧日本軍の過去の戦争に関する著作を複数出版されていますが、今の時代に戦争体験について取材し続ける動機やエネルギーはどこにあるのでしょうか。

前田 やっぱり「知りたい」という思いがあるというのは大きいです。

戦争体験については、残された資料がたくさんありますのでそれを読むだけでもさまざまなことが分かります。でも、まだ体験者の方がご存命でいる、さらにその人のことを直接知っている人がいる以上は、お目にかかり、そのお話を自分の耳で聞いてみたい。戦争の話をしているのに好奇心という言葉はふさわしくないかもしれませんが、そういう思いがあります。

その上で、戦争とは何だったのか、昭和とはどんな時代だったのかということを、自分の手で描き出してみたい。そう思って執筆活動を続けています。

佐田尾 私は、たとえばですが終戦の日に玉音放送を聞く前、そして聞いた後に、当時の人たちがみんな何を考えたかということにとても興味があるんです。同じ玉音放送でもみんな、人によってそれぞれに受け止めが違うはずなんですよね。

文学者であれば島尾敏雄などがそういう作品を書いています。私は、実際の証言や文献から、ある一つの時点に何が起こっていたのかを、群像劇的に描き出したい。そういう意欲が一番大きいと思います。

──戦争の歴史を語り継ぐということに対して、どんな思いで取り組まれていますか。

佐田尾 前田さんも先ほど「知りたい」という言葉を使われましたけれど、私も「真相を知りたい」という思いが強いです。たとえば、なぜ日本の終戦工作はうまくいかず、あれほどまでに終戦が遅れたのか、実はもっと遅れていたかもしれなかったとか、さまざまな歴史の「真相」を記者として知りたいという思いがある。そのために、さまざまな証言を集めたり文献を読んだりしているところですね。

前田 先の大戦では日本において、軍人・民間人あわせて310万人以上が亡くなったといわれています。これは、すごく深刻なことですよね。しかも、まだわずか80年前のことですから、「歴史」にもなりきっていないといえると思います。私たちは、直接体験者から話を聞いたりして、事実を知り得る立場にあるわけです。だったら知りたい、調べたいと思うんですね。

しかも、日本は昔からずっと戦争だけをしていたわけではありません。日中戦争に入っていく直前、満州事変をきっかけに景気もよくなったし、文化的にも非常に豊かな時代でした。そういう時代があったのになぜそこから戦争になって、310万もの人が亡くならなくてはならなかったのか。昭和時代の日本とは何だったのか。そういうことを、軍事、政治、経済、映画、小説、詩、音楽などさまざまな角度から調べてみたいという思いで頑張っています。

構成/仲藤里美 撮影/徳山喜行

陸戦隊と暁部隊 ヒロシマの秘史を追う
佐田尾 信作
陸戦隊と暁部隊 ヒロシマの秘史を追う
2025年12月17日発売
1,034円(税込)
新書判/240ページ
ISBN: 978-4-08-721391-1

1945年夏、広島県呉の山中で地雷を抱えて戦車に突き進む訓練に従う若者たち。
海軍の「陸戦隊」として「本土決戦」に備えていたところ、原爆投下直後の広島へ救援に向かえと命じられる。
一方、水上特攻艇マルレの要員を含む陸軍の船舶部隊「暁部隊」も同じく焦土の広島へ。
しかし、彼らが被爆した証を立てるまでには長い年月が必要だった――。
陸戦隊の元水兵を父に持つ著者。20年にわたって関係者たちの証言に耳を傾け、文献、手紙、ラジオ音源などを読み解いて、あの夏の名もなき兵たちを追う。

◆目次◆
はじめに 「大和」生還者から父への手紙
第一章 乗るフネのない水兵たち
第二章 山中の「自爆訓練」
第三章 呉海軍、広島ニ急行ス
第四章 七人衆からの「川原石会」
第五章 「マルレ」を焼いた日
第六章 「決死」か「必死」か
第七章 百歳の原爆手帳
おわりに 旧軍港「覚醒」に思う

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おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像
前田 啓介
おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像
2024年1月17日発売
1,485円(税込)
新書判/408ページ
ISBN: 978-4-08-721298-3

岡本喜八は一九二四(大正十三)年生まれ。
『独立愚連隊』『日本のいちばん長い日』『江分利満氏の優雅な生活』など、戦中派の心情をそこかしこに込めた映画を撮り続けた職人肌の監督として知られる。
陸軍予備士官学校で終戦を迎え、戦後映画界に復帰すると、戦争、時代劇、SF、青春群像など、バリエーション豊かで喜劇性にあふれた作品をつくった。
喜八が生涯を通じてこだわり抜いた戦中派とは何なのか。
新たに発掘された若き日の日記をひも解きつつ、映画監督・岡本喜八の実像と戦中派の心情に迫るノンフィクション。

【目次】
はじめに
第一章  米子
第二章  なぜ死なねばならないのか
第三章  早生まれ
第四章  戦中派
おわりに

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