軍歴をたどる──日米の違い
前田 佐田尾さんは、戦争で亡くなられた方の遺族に数多く取材をされていますが、皆さん歓迎してくださるというか、進んで話をしてくださるんでしょうか。戦争体験の当事者は「機会があれば話したい」と思っていたかもしれないけれど、遺族になるともうあまり関心がなかったり、あえて話したくないと思っていたりする方もいらっしゃるのかなと思ったのですが。
佐田尾 今回の本の取材では、そういうことはなかったですね。所在が分からなくて話を聞けなかった人はいますが、取材をお願いした方に断られることはなかったです。
前田 それは、佐田尾さんのお父様も陸戦隊にいらしたということで、いわば関係者だということが、受け入れてもらいやすい理由の一つになったんでしょうか。
佐田尾 そうかもしれないですが、それも人それぞれなので、本当のところは分かりません。ただ、たくさんの遺族の方たちとお会いする中で、この人たちは多分、父親の従軍体験をたどりながら、自分の生きる拠り所を見つけているんじゃないかと思うことがよくありました。その熱意を、無理矢理「反戦」「反核」といったわかりやすい言葉に結びつけないように、というのは、書きながら意識していたところですね。
そういえば、今回の本を出した後に、読者の方から「うちの父も陸戦隊員だったようです」「暁部隊にいたみたいなんです」といった連絡をいくつもいただきました。
前田 そういうときはどうされるんですか。
佐田尾 細かいところはよく分からないというケースがほとんどなので、まずは厚生労働省か都道府県に連絡して、ご本人の軍歴証明書を取ってください、とお話ししています。軍歴が手に入って、もしその読み解き方が分からなかったら代わりに読んでみますよ、ともお伝えして。
前田 私が『おかしゅうて、やがてかなしき』で映画監督の岡本喜八について調べていたときも、ご家族に軍歴証明書を取ってほしいとお願いしました。それで初めて「いつどの部隊に入ったのか」「いつどこに移動したのか」という、戦時中の岡本監督の細かい動きが日にち単位で、しかも公的な資料から分かったんです。ご家族でも、だいたいの動きは分かっていても、細かいところはご存じないことが多いんですよね。
私の祖父の軍歴も今回取得しまして、それで祖父がいつどこで何をしていたのかとか、いろんなことが分かりました。やっぱり、意外と知らないことがあるんだなと思いましたね。
佐田尾 旧日本軍の軍歴は三親等以内の親族からの請求でないと公開しないことになっているので、それが壁になるんですよね。アメリカだと、軍歴はネットで調べたらある程度わかるそうです。
著名人が自分の家族の歴史をたどる、NHKの『ファミリーヒストリー』という番組がありますが、そこに以前、俳優の草刈正雄さんが出演していました。彼のお父さんはアメリカ軍人で、ずっと「朝鮮戦争で戦死した」と聞かされていたんだけど、番組で調べたら実は死んでいなかった。他の女性と結婚して家庭を持っていたことがわかり……。『ファミリーヒストリー』で一番面白い回だと思いましたが、あれもそうやって軍歴を調べたんでしょうね。
前田 たしかにアメリカ軍のオープンさはすごいですよね。アメリカの軍人に取材するときには、退役軍人の団体に連絡して「こういう状況でこういう場所にいた人を探している」と問い合わせすると、ちゃんと探し出して教えてくれるんです。それも、お願いすると、ただ教えてくれるだけじゃなくて、生きてるか死んでるか、さらには話が聞けるか聞けないかまで確認して世話してくれる。最初は「こんなことまでしてくれるのか」と驚きました。
日本も戦争に勝っていたらそうなっていたのかもしれませんが、「日本軍」という組織がもうないですからね。旧海軍と海上自衛隊の親睦組織として「水交会」や旧陸軍の「偕行社」がありますけど、先ほどの個人情報の関係もあり、なかなかアメリカと同じようにはいかないです。














