「ヤマト建設某重大問題。」(集英社文庫・コミック版2巻収録)

サラリーマンの最大の弱点

「サラリーマンの最大の弱点は、仕事に生活がかかっているってことだよ」

今回もまた、『サラリーマン金太郎』で名言が飛び出した。

舞台はヤマト建設。社長・大島は海外出張へ。その留守の10日間で、反社長派の中堅社員たちは“クーデター”を画策する。

料亭に集まり、密談が始まる。だが話は簡単にはまとまらない。石川はほかの社員と同じように大島社長に不満を抱いている。だが同時に、もし社長がいなくなれば経営が傾きかねないとも危惧している。

「俺は会長を潰したくない。俺はサラリーマンなんだから……」

その本音が重い。さらに、「社長が嫌い」と口にする同僚に対しては説教を浴びせる。

「ふざけるなバカ野郎! サラリーマンが社長を嫌いだと、そんなことが通用するか!? 学生じゃねえんだ。実社会にある人間関係は上下関係しかないんだよ! 甘ったれたことを言うな!!」

だが、これにはすぐさま反論が返る。

「気に入らない大将の下で命なんかかけられるかよ!そんな嘘は他人に吐けても、自分には吐けねぇよ!」

正論VS正論。本音と本音のぶつかり合いだ。

どちらが正しいと簡単に言える話ではない。ただ言えるのは、石川が情けないわけでも、臆病なわけでもない。彼もまた、自分の立場で必死に生きているのだ。そしてここで、あの一言が出る。

「サラリーマンの最大の弱点は、仕事に生活がかかっているってことだよ」

続けて石川は言う。

「生活のことを考えねえで仕事にのめり込むなんて甘えは許されないんだ。それを否定する奴は逃げているだけだ。現実からな……」

刺さる。平成初期の漫画だが、この言葉は令和でもまったく古びていない。

当時のサラリーマン像は、今よりもずっと“会社依存型”だった。終身雇用、年功序列、住宅ローン35年。会社が傾けば、人生が傾く。だからこそ、簡単には戦えない。

今は時代が変わった。転職は珍しくないし、副業も当たり前になりつつある。会社が気に入らなければ、別の場所を探すという選択肢はすぐに浮かぶ。

だが本当に、身軽になったと言い切れるだろうか。

仕事環境を変えるストレスは想像以上に大きい。転職社会になっているといえど、言い出せず、抱え込み、心を病む人もいる。退職代行サービスも存在する。時代が変わっても、サラリーマンはサラリーマンなのだ。

第13話は、これでもかというほどにサラリーマン論が語りつくされた一遍だ。