投手はイケメン+ドラマ性がポイント
――著書で紹介された「推しランキング」は投手部門と野手部門で分かれていますが、それぞれの傾向はありますか?
牛窪恵(以下、同) まず投手ですが、ざっくり言うと、テレビ中継や動画などで野手に比べて露出時間が長く、ゲームを支配する主役なので、特に“イケメン”が上位にランクインしている印象です。
一方で、野手では投手以上に“成績”を重視する声が目立ちました。また、投手は個人としての活躍が評価されていましたが、野手はチームプレーの精神が強い印象の選手が人気なようです。
――それを踏まえてランキングを見ていきましょう。まずは投手編です。
第1位 才木浩人 141票
第2位 岩崎優 83票
第3位 湯浅京己 57票
第4位 伊藤将司 45票
第5位 大竹耕太郎 36票
まず才木投手、湯浅投手、伊藤投手といった、普段からTORACOに「イケメン」と評価されている選手が上位を占めているのが分かります。ただ、もう1つ気づくのは、才木投手をはじめ、ケガなどに苦しんだ投手が何人も含まれていること。
たとえば、才木投手は「トミー・ジョン手術」を経験していますし、湯浅投手は「胸椎黄色靭帯骨化症」という国指定の難病にかかって大手術を経験しました。6位以下にも、そうした苦労を知る選手が散見されます。
日本語には「判官びいき」という言葉がありますが、一般に人は、弱者や不運な人など(アンダードッグ)に感情移入したり応援したりしやすい。「アンダードッグ効果」とも呼ばれます。とくに女性は、「守ってあげたい」という母性(庇護欲に近い感情)を抱きやすいので、上位にも6位以下にもそうした選手がランクインしたのだと思います。
――苦労している選手のほうが、感情移入しやすいと。
そうですね。そのあたりは推し活のひとつの醍醐味かと思います。「プロセスエコノミー」という言葉をご存じでしょうか。最初から完成された存在がドンと登場するよりも、不完全な存在が少しずつ成長していくプロセス(過程)を発信し続けたほうが、ファンの熱意が醸成されやすい。なぜならその過程には、成長するまでの「ストーリー」があるからです。
韓国アイドルのBTSも、下積みが長かったですよね。推し活では、最初から売れていたり苦労知らずだったりする対象よりは、下積み生活が長いなど苦労のストーリーがあったほうが「応援してあげたい」との思い入れが生まれやすい。
また、下積みから推しを支え続ける推し仲間どうしが連帯することで、横の繋がりができていく。それが、前回お伝えしたウェルビーイングの要素の一つである「社会的繋がり」にも発展し、幸福感を後押ししやすくなるんです。
――昨年、すばらしい成績を残した石井大智投手は、トップ5には入りませんでしたね。
石井投手は本調査の時点では、大きなケガや病気に見舞われてはいませんでした。ただ今年2月、沖縄での春季キャンプ中にアキレス腱断裂という大ケガをしてしまい、楽しみにしていた3月の「WBC(ワールドベースボールクラシック)」にも出場できなかった。この逆境を乗り越えたとき、石井投手を推す女性ファンはかなり増えると確信しています。
振り返れば、2023年の日本シリーズ第4戦。ピッチャー交代の場面で、ケガから復帰した湯浅投手の名前がコールされたとき、ワーッと球場の空気が一変する大歓声が挙がりました。私も含め阪神ファンは、石井投手の復帰登板の試合でもこのような光景が見られるのではと、今から想像してワクワクしているんです!
――ドラマ性が大事なんですね。
その意味でもう一人、注目すべきは、2位の岩崎投手。彼はいわゆるイケメンタイプではありませんし、自身の野球キャリアでケガや病気など、才木投手や湯浅投手のような人間ドラマを披露してもこなかった。それでも2位に入ったのは、彼の内面によるところが大きいと思います。
たとえば、2023年のリーグ優勝決定試合で岩崎投手が「登場曲」に使ったのは、ゆずの『栄光の架橋』。その年に28歳という若さで亡くなった、元チームメイトで岩崎投手の同期でもあった故・横田慎太郎さんが、現役時代に登場曲として使っていた曲を流し、横田さんの思いを背負ってマウンドへと向かったのです。
この時の甲子園の盛り上がりもすさまじかった。私をはじめ、多くの阪神ファンは感動して涙を流しました。そういった岩崎投手の思いやりや人間性も、ランキングに大きな影響を与えた一因かと思います。
















