トルコ政府のナショナリズム政策とクルド人の反発

現在日本に居住するクルド人は、そのほとんどがトルコ出身と言われています。では、クルド人はトルコ国内でどのような扱いを受けているのでしょうか。次にトルコにおけるクルド人の歴史を見ていきましょう。

前述したようにトルコ共和国は、オスマン帝国を滅ぼしたムスタファ=ケマルが建国したトルコ人中心の国です。ムスタファ=ケマルらは世界大戦敗戦後の混乱の中、なんとかトルコ人の国を再建するべく、トルコ=ナショナリズムに基づいて改革を進めました。トルコ=ナショナリズム、つまりトルコ共和国はトルコ人の国として団結し発展することを目指したのです。

オスマン帝国は多民族国家だったため、その名残からトルコ共和国内にも多くの民族が住んでいました。しかし、ムスタファ=ケマルはトルコ人国家の建設を目指したのです。そのため、たとえばギリシアとの住民交換を行いました。トルコ人はイスラーム教徒である、という点から国内のキリスト教徒をギリシアに引き取ってもらう、かわりにギリシア国内のイスラーム教徒をトルコが引き受ける、ということを行ったのです。これは「合法的なジェノサイド」と批判されることもありますが、これを決行したのです。

それ以外にも、公用語はトルコ語としそれ以外の言語の禁止、地名をトルコ語に変更、さらには焚書なども行いました。こうしてトルコ=ナショナリズムに基づく国づくりを進めていったのです。そして、こうした改革は大きな成果を残しました。

しかし、これに猛反発したのがトルコに居住していたクルド人でした。クルド人にもトルコ語が強要され、学校や役所など公共の場でクルド語は禁止されるなど、大変な迫害を受けたのです。

1978年、迫害を受けたトルコのクルド人は、イランのクルド人らの一部とともに、クルド人国家の独立を目指してPKK(クルド労働者党)を結成しました。このPKKは、レーニンや毛沢東を讃える勢力で、独立のためにテロ活動を行うなど危険な事件を起こし続けています。つまりこれは極左のテロ組織となっていったのです。

そのためPKKに対してトルコは、軍を動員して徹底的な攻撃を行ったりもしています。そしてこの組織は今でも活動を継続しているため、現在ではトルコ政府だけでなく各国政府によって危険視されています。たとえばアメリカ・イギリス・EUはPKKをテロ組織に指定していますし、日本も国際テロ組織と指定しています。

一方で現在のトルコ政府はクルド人との融和を掲げ、国営放送でクルド語の放送を始めたり、クルド系政党に対してクルド語での政治活動を認めるなどしています。選挙権もありますし、人権も保証されています。クルド人の国会議員もいます。このように融和が進められ、トルコの中で平和に暮らしているクルド人も多く存在するのです。

しかし一方でPKKのような危険な組織に加入し、活動を続けているクルド人がいるのも事実なのです。

トルコライス(写真/PhotoAC)
トルコライス(写真/PhotoAC)
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文/土井昭

『新装版 教科書から消えた世界史』(扶桑社)
土井昭
『新装版 教科書から消えた世界史』(扶桑社)
2026年2月28日
1,320円(税込)
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