公務員試験に落ちて、再び、ひきこもる
ひきこもりから脱したのは7か月後だった。
きっかけは、大学時代に先輩がMD(ミニディスク)に入れてくれたゲームの曲だ。繰り返し聞いて、その曲名がタイトルになっているゲームをプレイしてみたら、力が湧いてきたのだという。
「自分が死んでも世界が存続するような選択ができるゲームなんですけど、やっているうちに“人間も悪くないな”って感覚が芽生えてきて。このまんまじゃいかんっていう感覚もあったんで、公務員になろうと思ったんです。
一念発起過ぎるやろとは思ったけど、祖父がもともと国税局で働いていたのもあるし、これまでの人生を逆転する、くらいの勢いでないと取り返せないと」
公務員試験の専門学校に通って受験したが1年目は失敗。2年目は面接で落ちてしまう。落ち込んだ藤原さんは、再び自室にひきこもり、昼夜逆転の生活が始まった。
「2回目にひきこもったときは、自分にはゲームする資格もない、ゲームなんか楽しんだらあかんやろみたいな感じでしたね」
思わず、「そこまで自分を責めなくてもいいのに」と言うと、藤原さんは小さく首を振る。
「自分自身が自分の存在を許していない感はずっとあって。自分責めが当たり前だったんです。将来展望も描けないし、不安だらけでした。実行する勇気はないのに、『死にたい』と常に言っていたので、妹に『お前の死にたいは軽い』って言われたこともあります」
実は兄も高校生のときに不登校になり、それ以来、自室にひきこもっていた。兄の部屋は1階、藤原さんは3階と離れていたが、お風呂など共有スペースで鉢合わせしないように気を遣い、家の中でも安心できなかったという。
3人の子どものうち2人がひきこもってしまい、母親は文字通り、「頭を抱えていた」そうだ。
「これからどうすんの?」「バイトせえへんの?」
母親にそう聞かれるたびに、藤原さんは「なんでわかってくれないの」と不満に思ったが、自分の思いを母にぶつけることはできず、ひきこもったまま2年の月日が過ぎた。
しかし、そんなひきこもり生活からの突破口を作ってくれたのは、母親だった。
〈後編へ続く『「自分、こんなに笑えるんだって」妹に無能扱いされ、買い物依存症にもなった39歳ひきこもり女性の“人生を変えた”出来事』〉
取材・文/萩原絹代













