世界のサッカー界における日本の役割
――当然ながら、JFA(日本サッカー協会)もFIFAの傘下です。日本でサッカーを見ている我々からすると、今後は、FIFAおよびそこにアプローチするJFAのどういう部分においてウオッチしていく必要があるでしょうか。
山崎「まずは、問題の根源になっている、ガバナンスの構造を変えることが大切だということを認識することですね。先ほど述べたリーグとFIFPROが起こしてる訴えが認められれば変わっていくと思いますが、それと並行して、FIFAが独占団体で競争が働かない組織であるということが問題だと認識することも重要です。
FIFAがプロサッカーのリーグ・クラブや選手のことを聞かずに暴走するなら、有力なリーグと選手会が、別の国際大会やリーグを作っていく動きを真剣に考えていくことも重要です。欧州では、FIFAがその動きを恣意的に妨げることは違法という判決も出ているので、そうした動きを現実化させてプレッシャーをかけていくことも必要です。
実際、FIFAが関わらない7人制のサッカーの国際大会の新設など新しい動きも出てきています。日本は、国際サッカー界の中心的存在だった欧州、南米とも距離があり、また最近力を持ってきている中東各国や米国とも異なる環境にあるので、より中立的で良心的な立場から、あるべきサッカー界の未来に向けて、積極的に発言や行動をとっていくにふさわしい立ち位置にあると思います」
かつて、1990年代、日本外交は戦後以来の米国に従属する軛は持ちながらもことユーゴスラビア紛争においては、この米国、ロシア、ドイツ、中国などとも距離を置いた公正な立場を貫き、独自のプレゼンスを示すことで、すべての民族からの信頼を得られていた。期待したいが、サッカー界においては現状ではまだなかなかそれが見えて来ない。
また2024年5月にAFC(アジアサッカー連盟)が、「会長の任期制限を撤廃する」というガバナンス的には破綻している意見を出して来た。4年任期制はFIFAゲート事件の反省を踏まえて、利権が固定しないように採用されていたものだが、これが根底からひっくり返る。
しかし、アジアの加盟国47の内、反対をしたのは、ヨルダンとオーストラリアだけで、日本もまた賛成してしまった。勇気を持って異議を唱えることで、アジア圏内で尊敬を集めると思うのだが。
山崎はしかし、若い日本の現役選手たちにこのジャンルにおいても希望を見ている。
山崎「FIFPROが現役選手から直接意見を聞くプレイヤーズカウンシルというセクションに日本からも遠藤航(リヴァプール)、長谷川唯(マンチェスターシティWFC)の二人が選ばれました。今は、選手がこうして欧州トップレベルのピッチ上で活躍するだけでなく、国際サッカー界の未来を創っていく当事者として関わるようになってきています。日本サッカー協会やJリーグ、WEリーグ含めて日本のサッカー関係者ができることはたくさんあると思います」
イビツァ・オシムは、2013年に故郷ボスニアで民族融和のためのスタジアム改修に日本の外務省がODA予算をつけた際、当該部署から「オシムさんもこのプロジェクトの実行委員会に入って欲しい」と言われたことがある。
プロジェクト自体は素晴らしい。しかしオシムはこの誘いにNOと言った。その理由は「日本政府がどれだけ清廉な入札方法を提示してもボスニアでは確実に汚職が起きて誰かの懐にお金が入る。そういう不正に自分の名前が使われて結果的に加担するのは本意ではない」というものであった。
権力は必ず腐敗することを看破していた。オシムが今、存命であればFIFAについてどうコメントしただろうか。
取材・文/木村元彦 写真/shutterstock













