永野の“芸人”としての美学とは

10月23日放送の『◯◯と永野がいたら、もうコント。』では、永野は自身のお笑いについて次のように語った。

「ピン芸人だから、ボケとツッコミみたいなものがないじゃないですか。だから、あんま好きじゃないんですよ、ああいうのが。ボケの人はボケで、ツッコミの人はまともみたいな」

永野によれば、自身が監督を務めた映画『MAD MASK』にも「完全なる善人」は出てこない。だが、それこそが人間という多面的な存在の本質なのではないか。

永野はさまざまな番組で「人間を見せろ」と言うが、彼が繰り返し口撃する“大喜利芸人”や“大学お笑い”もまた、人間の内側にあるはずの多様な側面が見えない、言い換えれば人間味が感じられない笑いという点で、永野のなかでは共通しているのだろう。

とはいえ、改めて振り返ってみると、永野は『脱力タイムズ』で、芸というよりも人柄の良さ、人間味のようなもので売っている芸人を皮肉っていなかっただろうか――。そう、永野を真に受けすぎてはいけない。彼は正しいことを言う人ではない。だから永野はおもしろい。

「シェー」を決める永野(2024年、撮影/井上たろう)
「シェー」を決める永野(2024年、撮影/井上たろう)
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文/飲用てれび