温厚なずん・飯尾和樹にも毒舌を吐く

10月24日の放送では、飯尾和樹に対し「飯尾さんの弟子になりたくて」と持ち上げつつ、最終的に「飯尾さんのギャグには興味ないですけど、人柄が好きなんで。飯尾さんのギャグでは笑ったことないんですけど」と言い放った。

派手な芸よりも人柄で愛されるタイプの芸人に対する皮肉や批評のようでもあり、同時に、ただの無茶苦茶な暴言にも聞こえる。そのバランスが永野らしい。

永野がテレビで躍動(絵・彩賀ゆう)
永野がテレビで躍動(絵・彩賀ゆう)

芸人としての永野は、決して正しいことを言う人ではない。全体としては無茶苦茶なことを言っている。だからこそ、ときどき混ざる「正しいことっぽい何か」が、妙に際立つ。その絶妙で危ういバランスを、永野は決して見誤らない。だから永野はおもしろい。

さらに、永野の再ブレイクを語るうえで、『マルコポロリ!』(関西テレビ)の存在は欠かせない。芸人をゲストに招き、いわゆる「裏側トーク」を展開する番組だが、MCの東野幸治を筆頭に、いじりの角度がやや意地悪い。そんな番組と永野の相性が悪いはずがない。

10月19日の永野の出演の仕方は、いつもと少し違っていた。ひな壇にはサツマカワRPG、ママタルト、ザ・ギースなど、過去の出演時にうまく立ち回れず苦い思いを味わった芸人たちがずらり。この日は彼らのリベンジ回だったが、永野は別室で収録の様子をモニタリングし、最後にダメ出しをしていくという流れだった。

しかし、永野の動きは番組の設定した流れに収まらない。舌鋒はゲスト芸人だけではなく、レギュラー陣にも向く。月亭八光のバー経営の話を「どう聞いていいかわからない」と批判したり、トークが行き詰まった末に開始されたギャグ対決で意気揚々と前に出てきた月亭方正を刺したりといった具合だ。

永野のこうした立ち回りは、他の番組でもよく見られる。ほかの芸人が誰も踏み込まない忖度ゾーンにあえて切り込む。群れずに、個として、あらゆる方向に牙を剥く。役割を演じる出演者がつくった空気を乱し、形式的なテレビの笑いに呼吸を取り戻す。視聴者はそこに、生きたテレビを感じるだろう。だから永野はおもしろい。