「アフレコ見学会の巻」(ジャンプ・コミックス第97巻)

今回は、本田の恋人である人気漫画家・乙姫菜々(おとひめ・なな)の作品がアニメ化され、そのアフレコ現場に両さんと本田が押しかけるお話をお届けする。

アフレコとはアフターレコーディングの略で、動画に合わせて声の演技を行い、録音していく作業を指す。先に声を録音し、それに合わせて絵を描いていく方式はプレスコ(プレスコアリング)と呼ばれる。こちらは、日本のアニメ制作において行われることは稀だ。

作業の手順としては、まず収録する話のフィルムを全員で見て、それから監督や演出家の意向に基づいて音響監督が指示を出し、声優たちが絵に合わせた演技をしていく。
収録の基準にするのはもちろん動画、そして声優とスタッフに配られているアフレコ台本と呼ばれるB5サイズの冊子だ。

アフレコ台本は、最上部にカット番号、上半分にカットやシーン、動きや感情の説明書き、下半分に役名とセリフが記されている。台本には、現場で修正したセリフや演出上の指示、録音したテイクがOKかリテイクを要するのか……等、自分が必要とする情報に応じてスタッフや声優が各々書き込んでいく。

アフレコ後の音に関する作業は、簡単に挙げると以下のようになる。

セリフ音声の編集を録音エンジニアや、ときには音響監督が自ら行う→音響監督が音楽と効果音をどこにどう使うかを考え、エンジニアや効果マン(効果音を用意、作成するスタッフ)に指示→絵に合わせてセリフ、音楽、効果音をミックスするダビングと呼ばれる作業を監督や演出と一緒に行う。

なお、本作で使われたスタジオ「Tバック」のモデルは、タバック。音響制作会社タバックが運営していたスタジオだ。東映アニメーション系列の施設だが、複数のアニメ制作会社、音響制作会社が利用していた。

ビル1階の道路に面した入口を通って地下への階段を降りると受付があり、左に曲がると通路左側に面してダビングルームやアフレコブースが並んでいた。

1973年の開設以降、数多くのアニメ作品の音響制作に使用されたが、ビルの老朽化によって2015年に閉鎖された。

そしてもうひとつおまけに述べておくと、アニメスタジオ「アニメダス」のモデルは、かつて秋本治先生が務めていた竜の子プロダクション(現・タツノコプロ)の鷹の台スタジオだったりする。

それでは次のページから、両さんのアフレコ見学に端を発した悪巧みが巻き起こす騒動をお楽しみください!!