歴代屈指のメンバーがそろったM-1
まったく、終わってなどいなかった。令和ロマンの史上初の2連覇で幕を閉じた昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)。1本目の漫才のつかみで髙比良くるまが放った「終わらせましょう」は、彼らの連覇と相まって、まるでM-1の「最終回」を宣言しているかのようでもあった。
しかし、ふたを開けてみればどうだろう。2025年のM-1決勝は、例年に引けを取らないおもしろさだった。むしろ、歴代でも高水準の決勝だったのではないか。
1組目のヤーレンズから、審査員の点数は高めだった。さらに大きく跳ねたのが、4組目に登場したエバース(佐々木隆史、町田和樹)である。
ネタは、佐々木がドライブデートをしたいという話からはじまる。ただ、佐々木は車を持っていない。だから町田に車になってほしい。なぜなら町田は人間のなかではだいぶ車っぽいから。そんな無茶なお願いを、もちろん町田は拒否する。
だが、掛け合いが進むにつれ、状況は反転しはじめる。「何を原動力に走り出せばいいんだよ」「俺は駐車場代もかかんねぇよ」「どうするんだよ、車から人間に戻るところ見られたら」――。いつの間にか自分が車になる前提で話を進める町田。そしてふと我に返る。
「(行き先は)せめて都内とかだろ……都内も嫌だよ」
日常会話のように聞こえる2人のやり取りのなかで、状況は何度もシームレスに反転する。観客を揺さぶる心地よいしゃべくり。「漫才は関西弁が有利」という状況は今も変わらないのかもしれないが、エバース以後、「言い訳」としては成立しづらくなるだろう。審査結果は870点。高得点を叩き出し暫定1位に躍り出た。
次に観客の笑いが爆発したのは、7組目のたくろう(赤木裕、きむらバンド)だった。ネタのテーマはリングアナ。きむらが赤木と一緒に格闘技のリングアナになりたいと言い、一方的に練習をはじめる。「まずは青コーナーより、身長164センチ、体重59キロ」。そんなきむらのコールのあとに、赤木が「……性格……おだ…やか」と挙動不審に応じる。


















