「おいでよ萌(もえ)風呂!の巻」(ジャンプ・コミックス第173巻)

今回は、両さんが銭湯を舞台にしたアニメを用いて、流行らない銭湯を「聖地」に仕立て上げて盛り立てるお話をお届けする。

漫画やアニメの舞台を詣でる「聖地巡礼」という言葉を見かけるようになって久しい。
戦車が街をぶっ壊しながら走り回るという、ネガティブに捉えられかねない作劇の舞台を、地域を挙げて充分に演出し、訪れるファンたちを手厚く歓迎した茨城県大洗町の『ガールズ&パンツァー』。

キャンプ女子の活動した場所をアピールしつつ、実際に訪れてみたくなる多彩な施策を行い、地域のガイダンスにも余念がなかった山梨県身延町の『ゆるキャン△』。作中で表現された美しい風景や街並みを充分にアピールした岐阜県飛騨市が舞台の『君の名は。』。これらの成功事例は、いずれも多くの人々の注目を集めた。

だが、アニメ作品やキャラクターの人気にすがり、その人気による一発逆転的な経済効果を当て込んでの「聖地ブーム」「ご当地ゆるキャラ」の仕掛けは、実はその打率が相当に低い。その原因をざっくりと挙げると……。

まずは、なんといっても地域の努力、覚悟とノウハウの不足。美少女アニメの看板を立てておけばオタクが訪れてお金を落としていってくれる……といったような、実に虫のいい甘えが見受けられるケースが多いという。

作品&ファンへの理解と敬意、地域住民・企業自身による地域の魅力アピール、ファンに地域活性の担い手として参加してもらう、そしてそれらをアピールし運用していくノウハウとお金……これらがそろわないと、なかなか成功には結びつかないのだ。

そしてもうひとつ、作品自体の内容や人気、話題性については、地域でコントロールするのはほぼ不可能だ。できるのは、作品のポテンシャルと地域活性の手段として向いているかどうかを見極めることくらいだろうか。

本作では両さんが「銭湯を盛り立てるため、銭湯を舞台にしたアニメを制作・放送する」のだが、その予算をテレビ局からぶんどってきた彼の天才的(詐欺士的)才能が発揮され、起死回生の特大ホームランが放たれるのだが……。

それでは次のページから、萌えアニメ×銭湯の驚異的な経済効果の様子をご覧ください!!