「できない部下」の正体とは?「感性」「感情」「知識」「技術」の4要素で分析する方法
「もしあなたが管理職で、部下に対して言葉を尽くさないとチームが成果を出せないのだとしたら、それは仕組みができていない証拠だ」そう断言するコンサルタントの田尻望氏。氏によると「成果を出すリーダーの多くは、いくつかのミーティングを除けば、部下との会話はほぼゼロである」という。
書籍『無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた』より一部を抜粋・再構成し、できない部下がなぜできないか、その本質を見極めるフレームワークを紹介する。
無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた #1
悪い例 ③「この部下、どうも提案がイマイチ」の正体は?
部下Gさんは、営業トークが上手で、商品知識も十分にある。しかし、どうも顧客とのやり取りがスムーズにいかず、提案が顧客に刺さっていない。リーダーは、「もっとプレゼン技術を鍛えろ」と指導したが、なかなか改善しない。
不思議に思ったリーダーは、Gさんの商談に同行することにした。すると、顧客の表情や声のトーンの変化に気づかず、一方的にスラスラと話すGさんの姿が目についた。つまり、「技術」はあるが、「感性」(センス)が不足していたのだ。
営業やマーケティングでは、知識や技術が十分でも、「場の空気を読む」「相手の関心を察知する」といった感性が弱いと、うまくいかない場面がある。感性の問題は改善しないと思われがちだが、それは違う。感性を伸ばすアプローチは存在する。たとえば、次のようなアプローチだ。
■視点を設定し、優れた人のプレゼンや営業を観察させる(「どのタイミングで何を言っているか」「提案時の顧客の表情」などを意識させる)
■顧客のリアクションを意識するトレーニングを行う(「相手が頷いた回数」「興味を持ったフレーズ」を記録させる)
■実際の顧客とのやり取りについてフィードバックする(「この場面では、顧客が違うことを期待していたのでは?」などと具体的に指摘する)
感性の問題を解決しないまま、知識や技術を与えても期待する効果は得られない。部下が何の問題を抱えているかを見極めるためにも、部下の商談やプレゼンなど、実際の業務に取り組んでいる様子をフラットに観察する機会をつくってみることをおすすめする。
部下の「できない」を4要素で分析し、適切な対処をすることが、結果的にリーダーの負担を減らし、部下が自発的に成長できる環境をつくるのだ。
文/田尻望
写真はすべてイメージです 写真/shutterstock
無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた
田尻 望
2025/7/30
1,760円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4815628833
リーダーに「言葉」は要らない
◎ベストセラー『付加価値のつくりかた』『再現性の塊』『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』の著者最新作。
◎キーエンス本の火付け役である著者が、指示しなくても自然と成果が上がる「キーエンス×田尻」式のマネジメント手法を一挙公開!
成果を出すリーダーの多くは、いくつかのミーティングを除けば、部下との会話はほぼゼロである。一方、成果を出せないリーダーの多くは、口頭指示や質問などの対応に追われ、自分の仕事は定時後や休日に片付けることになる。
もし、あなたが言葉を尽くさないとチームが成果を出せないのだとしたら、それは仕組みができていない証拠だ。
「無言」になれるかどうかは、単に「しゃべる」「しゃべらない」の話ではない。
最小の時間と資本で、どれだけの付加価値を生み出せるかというマネジメントの根幹を問うテーマなのである。
(はじめにより抜粋)
[目次]
はじめに リーダーに「言葉」は要らない
序章 ここから始まる「無言」の構築
第1章 準備編:信頼と合意を築くマインドセット
第2章 問題解決編:目標達成を阻む壁を取り除く
第3章 仕組み化編:成功をくり返す、失敗をくり返さない
第4章 付加価値編:仕組みから付加価値を生み出す
終章 リーダー不要の組織へ
おわりに リーダーシップが苦手だった私がたどり着いた答え