悪い例①怖くて話せない部下にロープレ漬け

私が指導に関わった営業部では、新人のEさんが「商談で毎回断られる」と落ち込んでいた。

上司は「じゃあ、もっとロープレをやろう。技術を高めればうまくいくはずだ」と毎朝ロープレをくり返した。

何度も練習を重ね、Aさんはロープレでは完璧に話せるようになった。しかし、いざ実際の商談となると、声が震えてうまく話せない。結局、契約が取れないまま、ますます自信を失っていった。

このケースでは、「感情」の問題を「技術」の問題と誤解していた。営業に対する強い恐怖心がEさんの実力発揮を妨げていたのに、リーダーは「技術不足」と誤解し、Eさんをロープレ漬けにした。したがって、技術が向上しても恐怖心の問題は取り除かれず、結局うまくいかなかったのである。

「できない部下」の正体とは?「感性」「感情」「知識」「技術」の4要素で分析する方法_2

恐怖心を取り除くアプローチが先

最終的に、リーダーはEさんを自分の商談に何度も同行させることにした。技術的には十分独り立ちできるレベルだったが、しばらくEさんを一人で商談に行かせることをやめたのである。すると、徐々に本番の雰囲気に慣れてきたEさんは、実際の商談でも少しずつ発言できるようになった。

リーダーはほかにも、次のようなアプローチでEさんの営業に対する恐怖心を取り除いていった。

■「失敗してもフォローするから大丈夫」というメッセージを明確に伝える

■商談のなかで「失敗しても何とかなる場面」を意図的につくる(信頼が構築された既存顧客との商談に同席させるなど)

これらのアプローチにより、「話せばなんとかなる」という自信を持ったEさんの成約率は劇的に向上した。もともと技術は十分だったので、感情の問題さえ解決できれば、優秀な部下だったのである。リーダーが問題の所在を勘違いすると、いくら指導しても成果が出ないため、部下の自信を奪うことになってしまう。