スリム化の憂き目にあったBSは総合の再放送ばかり
NHKは2025年度の事業収入が、6000億円を下回ると見込んでいる。そして400億円の赤字となる見通しだ。減収は支払率の低下を織り込んでのことだろう。
つまりNHKは今後、値上げという選択肢をとらない限り、事業収入は6000億円に届くか届かないかくらいの水準で微増減しながら推移する可能性が高いことになる。
NHKが黒字だった2022年度の事業収入に占める国内放送費の経費率の割合は46%、給与は16%だった。この数字を2025年度の事業収入計画の5934億円に当てはめると、国内放送費は2720億円、給与は947億円だ。
黒字化のためには、今の金額から国内放送費は571億円、給与は167億円もの追加削減が必要なことを示唆している。NHKは2027年度の黒字化を目指しているが、あと2年半ほどでこの規模のコストカットを進めなければならないわけだ。
しかも、近年の番組制作費は、人件費や光熱費などインフレ要因も重なって高騰している。一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟による、2024年度テレビ番組製作会社経営情報アンケート調査によると、「前年度より上がった」との回答は14.5%に上っている。さらに、「変わらないが要求が増えた」は25.0%だ。
そして19.6%が「価格転嫁に応じてもらえなかった」と答えている。製作会社への負担は高まっており、予算を抑えて高品質の番組を発注するテレビ業界にありがちな体質を維持することは難しそうだ。
NHKが無理な予算削減を進めれば、コンテンツの質が低下する懸念がある。
その象徴とも言えるのがNHK BSだ。2023年12月にBS1とBSプレミアムを統合し、NHK BSとして再スタートを切った。組織のスリム化を図るためだ。しかし、NHK BSは総合の再放送ばかりが並ぶ結果となったのだ。
もともと、BSプレミアムはBSのオリジナルコンテンツを放送することをテーマに掲げていた。この方針を「BSプレミアム4K」が承継したと見ることもできるが、4Kテレビの普及率は2割程度と進んでいない。BSプレミアムの受け皿となったNHK BSが、オリジナルコンテンツ路線を踏襲するのが筋ではないのか。
結果的に予算削減が直撃し、総合の番組を再放送せざるを得ないと見られても仕方がないだろう。