なぜ日本の医者は「忙しい」のか

少子高齢化に伴い、日本の医療費は年々増加しています。一方、国民の健康保険料の負担能力が限界にきているのも事実です。

そこで私は、医療費の削減のために、「70歳以上の窓口自己負担割合を一律3割負担とする」、「市販薬として買える薬を健康保険の対象から外す」、「風邪への抗菌薬使用など無価値な医療を健康保険の対象から外す」の3つの改革を提唱しています。♯1

これにより国民の健康を損なわずに、最大7.3兆円の無駄な医療費の削減ができる計算です。

しかし、それでは一部の医療機関の経営が成り立たなくなる可能性も出てきてしまいます。そこで医療費の削減を実現しながら、さらに国民の健康を増進する保険制度のために、2つの医療改革を提言します。

一つ目はこちらです。

1、外来を包括支払制度にする 

日本の外来は、出来高払いという仕組みです。これは、提供される医療サービス一つ一つに診療報酬点数という価格表があり、その積み上げが医療機関に支払われるお金となります。

この制度は「量に対する支払い」と呼ばれることもあり、医療サービスの提供量を多くすればするほど、医療機関が儲かる仕組みとなっています。よって、どうしても過剰医療になってしまう傾向があります。 

日本では、2年に1度の診療報酬改定で、医療サービスの単価が経時的に引き下げられるものの、提供する医療サービスの「量」はコントロールされていないため、医療機関としては利益を上げるために、大量の医療サービスを提供する「薄利多売」の医療モデルとなっています。その結果として、外来受診回数や入院日数が、欧米の2~3倍で高止まりしてしまっています。 

日本の医師数はアメリカやイギリスと比べて大差はないのですが、日本では常に「医師不足」が叫ばれています。私は日本には医師不足はなく、あるのは「相対的医師不足」なのだと考えています。 

日本の医師の業務量は多い(写真/Shutterstock)
日本の医師の業務量は多い(写真/Shutterstock)
すべての画像を見る

 業務量が欧米の2~3倍であるため、同じ医師数でも忙しくなってしまっているのです。もし外来患者数が今の半分になっても、まだ日本の医師は「忙しい、忙しい」と言っているのでしょうか? 私はそうは思いません。

出来高払いはどうしても過剰医療になり、医療サービスの消費量が最適な水準よりも多すぎるという問題があります。そこで、「包括支払い制度」の出番です。