受信料の減少ペースに追いつけない番組制作費と人件費の削減
「予算の関係なのか、新しい番組をつくるスタッフが不足しているのかわからないが、再放送が多く感じる」
これは2025年5月24日にNHK経営委員会の主催で行なわれた「視聴者のみなさまと語る会(大津)」で寄せられた意見の一部だ。多くの視聴者も、これと同じことを感じているのではないだろうか。
6月28日土曜日午前のNHK総合テレビの番組表を見ると、「チコちゃんに叱られる!」「ドキュメント72時間」「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「鶴瓶の家族に乾杯」「首都圏情報ネタドリ!」と、ほとんどが再放送で埋め尽くされていた。
これは民放キー局では見られない編成だ。受信料を引き下げる際、経営資源を質の高いコンテンツの制作に集中させるとの方針を示していたが、その負の側面が土曜日午前の番組内容によく表れているわけだ。
NHKは2023年10月から地上・衛星契約の受信料を1割引き下げ、学生免除を拡大した。これに伴い、2023年度のNHKの事業収入は6531億円で、前年度から433億円減った。2024年度の事業収入は6125億円で、406億円の減収である。
受信料の値下げも影響しているが、もっと頭の痛い問題もある。
支払率の低下だ。2024年度の支払率は77.5%で、前年度から0.9ポイント下がった。2023年から委託業者による訪問営業を取り止めた。その影響が出ており、受信料と支払率が下がるというダブルパンチを受けているのだ。
2019年度の支払率は81.8%と高水準だった。値下げ前でもあり、この年の事業収入は7384億円だった。このころから比べると、2024年度の事業収入は17.1%減少している。金額にして1259億円のマイナスだ。
一方で、事業支出の多くを占める国内放送費と給与の削減が進んでいない。国内放送費は2019年度が3495億円、2024年度が3291億円。人件費は1114億円から1096億円への減少である。2つの経費を合わせても222億円(4.8%)しか削減が進んでいない。
「再放送が多く感じる」という低予算な番組編成をしているにもかかわらず、減収に見合うコストカットが十分に進んでいないのだ。