バラマキではないと幹部は否定するが…
自民党の「2万円バラマキ」は物価高対策という名目だが、定額給付は消費活動に使われず、効果が薄いことが過去のデータで明らかになっている。自民党は、3兆円もの予算を組んで同じ失敗を繰り返そうというのだろうか。
6月19日、国民に一律2万円を給付するという参院選に向けた公約を発表した。子供と非課税世帯の大人に2万円を加算するというが、給付の目的は物価高騰による国民の負担軽減だ。同時に消費を喚起して経済を活性化させるというのが表向きの説明だが、選挙対策としてのバラマキだとの見方が大半である。
自民党は今年4月にも1人当たり5万円の給付金案を検討したが、批判的な世論の多さに取り下げていた。立憲民主や国民民主などの野党が消費減税を公約に掲げるなか、目玉に欠けていた自民が給付金案を復活させた形だ。小野寺五典政調会長はバラマキを否定しているが、これまでの流れを見れば、国民の多くがそう受け取るのも当然だ。
ポイントは、この給付金が国民や経済にとってどれだけ意味を持つのかということだ。しかし、実態は給付金の多くが貯蓄に回っており、経済対策として大きな意味を持たないことはデータが示している。
コロナ禍に行なわれた2020年の「特別定額給付金」が最たる例だ。1人当たり一律10万円を給付するというものだった。この給付金は予定金額の99.7%が支払われており、ほとんどの世帯に行き渡ったことがわかっている。
その効果については、内閣府が詳細な分析(「特別定額給付金が家計消費に与えた影響」)を行なっているが、支給5週前から10週後までの期間内での累積の消費増加効果は給付額の22%だった。別のデータを使った追加検証においても17%であり、2割(2万円)程度の消費に留まったという。
家計簿アプリ「マネーフォワードME」を使った別の検証では、6週間で確実に消費として確認できた支出は6%との結果も得られている。
一方、2020年における2人以上の1世帯当たりの貯蓄資産の合計額は1791万円で、前年に比べて36万円(2.1%増加)であった。2019年は3万円(0.2%増加)に留まっていたのだ。コロナ禍で消費が停滞していた影響もあるだろうが、その後も貯蓄は積み上がり続け、経済が正常化した2023年、2024年に入ってもその残高は増加している。
給付金は消費に回らず、貯蓄へと回されてしまうのだ。1人10万円もの給付を行なっても、十分な経済効果は得られないのである。