有料道路を自転車で爆走して大ケガ 

気力がわかず、数か月後に、自分で精神科を受診した。

「私一人の力では、もう、どうにもできないところまで来たなって、助けを求めるような気持ちで受診したんです。何か方法があるなら、何でも試してみたいなと思って」

うつ病と診断され、抗うつ剤を飲み始めた。すぐに切迫していた気持ちが楽になり、菓子店でアルバイトを始めることができた。ところが、元気になり過ぎて、ギフト用の箱を勝手に組み立ててしまうなどトラブルを何度も起こして、クビになってしまう。

本当はうつ病ではなく、うつ状態と躁状態をくり返す双極症だったのだが、当初はわからず、抗うつ剤が効きすぎて躁転してしまったのだ。

「人の気持ちを上げたり下げたり、何だと思っているんだ。もう医者は信じない! 薬は飲まない!」

躁転して万能感に満ちていた石丸さんは、相手も時間も構わず電話をかけたり、車を運転してビュンビュン車線変更したり。父親が「危ない」と思って車を隠すと、自転車を乗り回した。

そんなある日、行き着いたのが有料道路のゲートだ。

「有料道路に自転車で入っちゃいけないことは百も承知なんですけど、なんか、そこを突破してやろうというモードに突入してしまって。で、2車線の真ん中を自転車で爆走。後ろから車にひかれて、ボンネットに乗り上げて。気が付いたら病院でした」

写真はイメージです(PhotoAC)
写真はイメージです(PhotoAC)

骨折した右足と鎖骨を手術。医師に説得されて躁を抑える薬を飲み始めた。だが、躁状態はすぐには治まらない。車椅子で病院を抜け出して何度も実家に戻り、「手に負えない」と精神科の閉鎖病棟に移された。

2、3か月後に退院したが、今度はひどいうつ状態になり、そのままひきこもってしまった。毎日、余計なことを考えないようにパソコンでゲームをして現実逃避。お風呂も何日も入らないし、家からも出ない。いわゆる“ガチこもり”状態が続く。

「最初は罪悪感もあり、両親に怒られるのではないかとビクビクしていたんです。でも、夜中までゲームをしていても怒られたことはないし、安心してひきこもらせてくれたので、環境的にはありがたかったですね」