ぬいぐるみはなんとの9000円
同じく長蛇の列といえば、ドイツのパビリオン「わ! ドイツ」だ。「循環経済(サーキュラー・エコノミー)」をテーマにしたパビリオンでは、手のひらサイズのキャラクター「サーキュラー」が展示物を音声で案内してくれる。その丸っこいフォルムと光る姿は、多くの観光客を魅了している。
「フォルムはかわいい体型。要するに幼児体型なんですよ。これは本能的なもので、赤ちゃんのような体型は、やはり“かわいい”と感じてしまう。頭が大きくて二頭身、手足が短い。基本的には、そういう体型を見ると人間は『かわいいな』と思ってしまうんです。
サーキュラーはシンプルなのはとても良いですが、『わ! ドイツ』の『わ』という文字をお腹に書くなど、もう2つほどキャラクターの個性を際立たせる要素を足さないと、やや弱い印象があります。ドイツっぽくないんですよね。
ただ、お土産はたくさんあるようなので、『じゃあ、ドイツを買おうかな?』と迷ってもらって、家でピンバッジなどを付けて楽しむというのも、ひとつの楽しみ方ですね」
「ミャクミャクの友達」と銘打たれたチェコの「レネー」は、なかなか強烈だ。黄緑色のイカのようだが、「ボヘミアンガラスの妖精」なのだという。
「ユニークですが、ボヘミアンガラスとは誰も思わないでしょう。素材もガラスとは程遠い。私が気になったのは、着ぐるみのバージョンです。本来は足が3本あるはずなのですが、中の人の足がそのまま出ています。これは“ゆるい”ですね。
例えば、サッカー日本代表マスコットの八咫烏(やたがらす)も足は3本ありますが、着ぐるみでは1本は尻尾のようになっています。キャラクターを尊重していて、妥協していない。ただ、レネーの場合は着ぐるみの中の人によって、脚が伸びたり縮んだりするでしょう。『君はどのレネーと会った? 足元を見てみよう』と言いたくなりますね」
その一方で、このぬいぐるみはなんと9000円だ。
「いや、これは買う価値があります。だって、こんなの作る人いませんから(笑)。工場で作るのも大変ですよ。置いておけばインテリアにもなります。これは9000円してもおかしくないでしょう」
ベルギーの「ベルベル」も、ぬいぐるみの展開に積極的だ。
「まず、ネーミングがいい。それに、おでこにベルギー国旗が小さく描かれているのも特徴的ですね。しかも、よく見ると右目だけが大きいこと。シンメトリーではない。日本人だと、こういうことはやりません。何か意図はあるんでしょうけど、これだけでは読み取れない。その謎を、ぜひ会場で解いてほしいですね」
ただ、残念なことに、ベルベルも着ぐるみになると“ゆるく”なる。
「どうして足が長くなってしまうのか……。日本では、着ぐるみの足を短く見せるために、例えば帽子を被せるなどの工夫をします。ハンギョドンの頭にタコの『さゆりちゃん』が乗っているのも、着ぐるみになったときのことを視野に入れていたからです。足を短く見せるには、それなりの工夫が必要なんです」