「金太郎、引き抜かれる。」(集英社文庫・コミック版8巻収録)
金太郎に舞い込んだヘッドハンティングの話
男の野望と聞くと、まず思い浮かぶのは、自分が頂点に立つことだろう。金を持つこと、権力を持つこと、天下を取ること……。
『サラリーマン金太郎』に登場する松平一平も、まさにそういう男だ。「金のある山賊が天下を取る」と言い切り、自分が社会を動かす側に回ることを本気で狙っている。
だが、第75話で語られる松平のもう一つの夢は、少しねじれていて面白い。
それが、「憧れていた男を自分の部下にする」という夢である。
松平は、ヤマト建設にいる金太郎を自分の会社に誘う。しかもただ引き抜きたいのではない。松平は昔、金太郎が総長を務めていた暴走族に所属していたことがあり、その背中を見ていた。自分が後ろから眺めていた男、その存在を、自分の会社に迎え入れたいというのだ。
それは金太郎に対する敵意などではない。敬愛しているがゆえの感情だ。
松平は金太郎を社長として自分の会社に迎え入れ、一緒に社会で成り上がっていこうと持ちかける。
天下を取りたい。社会を動かしたい。そして、その景色の中に、かつて憧れた男を従えていたい。松平一平は、そういう意味でとても男っぽく、同時にとても変態的にも見える。だが、その気持ちは妙に生々しく、どこか共感してしまう。
この松平の誘いに、金太郎はどう応えるのか。そこはぜひ、漫画で確かめてほしい。























