テクノロジーの進化がもたらすリスクの大きさ
「人類にもたらす被害が大きい可能性がある技術については、その野放図な進歩を止めるべきだ」というものである。「その科学技術が人類にもたらすベネフィットよりも、それがもたらすリスクの方が大きいテクノロジー」については開発に抑制的であるべきだというのは当然のことである。
それでも、人類が生き延びるためにはテクノロジーの進化を一時停止させて、少し冷静になった方がいいということを当のテクノロジー先進国の人々が言い出したということには、少し驚いた方がいい。そこまでテクノロジーは暴走してきているのである。
では、どうやってリスクの高いテクノロジーの開発を抑制できるのか。問題はそこである。その先端技術がどんな仕掛けで、どんな可能性とどんなリスクを含んでいるのかをある程度正確に理解しているのはそれを開発した当の企業の技術者だけである。
だから、技術の進歩を抑止するためにもし国際会議を開催する必要が生じた場合には、テック・ジャイアントのメンバーを会議の席に列国政府と同じステイタスで招かざるを得ない。
彼らの協力がなければもう現行の国際秩序を維持することができない以上、テック・ジャイアントのCEOや開発責任者を他国の大統領や首相と同格の政治プレーヤーとして遇するしかない。
皮肉な話だが、「人類にとって危険なテクノロジー」の開発者はその「功績」によって、国際会議では、一国の元首のような扱いを受けることになるのである。
テック・ジャイアントが民主政にとってのリスクである理由はそれだけではない。もう一つのリスクは超富裕層が民主国家の仕事を代行するかも知れないということである。