人口3割減へ 1億ウォンの子育て支援の自治体も
韓国南西部の中心都市で、約145万人が暮らす光州市。高層マンションが立ち並ぶ住宅街の一角にある高齢者施設は、もともと子どもたちの声にあふれた幼稚園だった。急速な少子化で園児がみるみる減り、閉園から改装を経て、2022年から高齢者施設へ「業態転換」した。
施設内には、幼稚園時代に園児たちが使っていた太鼓やおもちゃなどがそのまま残されている。それらはいま、施設に通ってくる高齢者らの活動に使われている。
こうした状況は幼稚園に限らない。韓国保健福祉省によると、ここ数年は全国で保育園の数が毎年、約2千カ所ずつ減っている。韓国教育開発院によると、全国の小中高校の児童・生徒数は24年で約513万人。これが2年後には約483万人に、5年後には約427万人に減る見込みという。首都のソウルでも廃校する小学校が出ているほどだ。
こうした状況にどう対応していくかは、韓国の政府や自治体にとって最優先とも言うべき課題になっている。
いくつもの紙コップを積み重ね、崩し、また積み重ねていく。10人ほどの子どもたちが、遊びに夢中になっていた。笑い声と歓声が途切れることがない。
ここは、韓国南東部の慶尚北道・義城郡。小学校の近くに「共同育児分かち合い」と記された施設があった。郡内に住む共働きなどの世帯が夕方6時まで小学生の子どもを預けられるように、その名の通り、住民と子育てを「分かち合う」ために郡がつくったものだ。
2019年以降、3カ所まで増えており、定員は計50人。利用料はかからない。
24年春から小学校6年生と3年生になる娘2人を育てている母親の白殷正さん(42)に、記者は話を聞いた。以前は車で1時間ほどの大都市・大邱で暮らしていたが、義城に戻って農業を営んでいる。「作業が終わる夕方まで、子どもを見てもらえて助かります」
大邱にいたころは、長女の塾代だけで、毎月70万ウォン(約8万円)ほどかかっていた。美術、テコンドー、そして勉強。「友達がみんな通っていて、うちだけ行かせないわけにも……」。当時のそんな心境を振り返った。韓国では都市部を中心に教育費の負担の大きさが少子化の大きな要因になっているが、義城の施設では、絵を描いたりスポーツに取り組んだりといったプログラムもすべて無料だ。
学歴社会の韓国で、自身の子どもが塾も少ない地方で育つことに不安がないわけではない。とはいえ、「子どもたちが生活を気に入って、よく笑うんですよ」とも白さんは話してくれた。