年金が3割減ることの支援には目もくれず…
さらに、氷河期世代の一番の課題は年金だ。第2次ベビーブームで人口の多いこの世代が年金受給者の年齢になる2040年ごろになると、このまま放置されたとして基礎年金が今より3割下がることがわかっている。非正規雇用の期間が長い人は十分な資産がなく、老後の生活は厳しくなるはずだ。そうなると、生活保護者の急増も懸念される。
政府は2004年の年金改革で、保険料を段階的に引き上げる一方、給付水準を緩やかに下げて財政健全化を図る方針を固めた。しかし、給付の引き上げを物価や賃金の上昇よりも抑制する仕組みが機能せず、効果はまったく出なかった。基礎年金が3割下がるのは、政府の年金改革失敗のツケなのだ。
政府は厚生年金の積立金を回す案での合意を進めたものの、選挙前の国民からの反発を嫌ってか、年金改革には盛り込まれなかった。リスキリングなどによって氷河期世代を支援するというが、3割下がるといわれる基礎年金など、本質的な支援には何ひとつ手をつけていない。
氷河期世代は目先の安易な政策ではなく、中長期的な視点で自分たちの生活を支援する政策を打ち出す政党がどこか見極める必要がある。
取材・文/不破聡