大学で「原稿用紙の使い方を学ぶ」という驚きのカリキュラム

大学無償化の問題点の一つは、各大学の質にバラつきがあることだ。

財務省が4月15日に開催した「財政制度分科会」で「活力ある経済社会の実現・安心で豊かな地域社会の確立(財政各論Ⅰ)」という驚きの資料を公開した。高等教育において安定的・持続的な人材の質の確保が不可欠としたうえで、「定員割れ私立大学の中には、義務・中等教育で学ぶような内容の授業が行なわれている」と指摘したのだ。

シラバスを公開している私立大学の中には、「四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)から始める」、「社会に出ればパーセンテージ等の計算は日常茶飯事」、「原稿用紙の使い方を学ぶ。特に句読点、数字、記号の書き方を練習する」、「日本語の基本的な表記のしかたを練習する」などという、中等教育どころか小学生レベルのことが書かれていたところもあったという。

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大学生の学力低下は、大学入学定員の増加が背景にあると言われている。日本人の大学進学率は年々高まっているのだ。2024年度の大学・短大進学率は62.3%。大学進学率のみでは59.1%で、いずれも前年度より1ポイント以上上昇して過去最高を記録した。

しかし、定員割れの私立大学も増加するという不都合な現実がある。2024年度の定員割れ私大の割合は全体の59.2%にものぼる。前年度は53.3%であり、1年で実に5.9ポイントも上がっているのだ。

旺文社が発表している学校基本調査「増える大学、減る短大。学部学生は10年ぶり減少」によれば、2024年の日本の大学数は前年から3校増加して813校となり、過去最高を記録した。国内では深刻な少子化が進んでいるにも関わらずだ。

そして、私立の占有率は72.9%(1989年)から76.8%(2024年)へと増加している。定員割れを起こしている一部の私立大学は、学力が大学レベルに達していない学生の受け皿となっているのは明らかだろう。

そもそも、私立大には年間3000億円もの税金が投入されている。その是非の議論もなされぬまま、授業料の無償化に突き進めば一部の私立大学をゾンビ化させるだけだろう。