俳優・川村陽介の転機
2000年に行なわれた21世紀ムービースターオーディションでは審査員特別賞を受賞。同年、赤川次郎原作の『死者の学園祭』(’00年)でデビューを果たした。
当時17歳の彼はどんな心境で初演技に臨んだのか。
「かなり緊張してたことは覚えてます。ただの田舎の高校生が、大人がたくさんいる現場にいきなり連れていかれて……。
役名もなかったし、 セリフも2〜3言くらいしかなかった。でもそのセリフをめちゃくちゃ家で練習したなぁ。
母は素人なのに、こうじゃない、ああじゃないって」
俳優としてデビューした後、レッスンやオーディションを受ける日々が続いたという。
2002年、20歳になる頃、故・蜷川幸雄監督の映画『青の炎』(’03年)のオーディションを受けることになった。この時、俳優人生で最初の転機が訪れたそうだ。
「当時はレッスンに通いながら、あらゆるオーディションを受けまくってたけど、落ちてばかり。どうせこんなもんだろうってやさぐれてましたね(笑)。
(ドラマや映画の撮影)現場にも出られないので、お芝居のやり甲斐もまだ見出せてなかった。辞めたいとまでは思ってないけど、大変だったし、このままじゃ俳優は続けられないだろうなって。
そんな時に『青の炎』のオーディションを受けたら、二宮くんのクラスメイト役に合格しちゃったんですよ」
映画『青の炎』は二宮和也が映画初主演を果たし、監督は演劇界の巨匠・蜷川幸雄さん(享年80)が務め大きな話題を集めた。
すでに蜷川監督は、「怖い監督」として有名だったため、怯えながら現場へ出向いたという。
「『蜷川さんの現場は気をつけろよ、灰皿飛んでくるからな』とか、やたらと周りの人が脅してきて、ビビりながら現場に行きました。
でも実際に会ったら、めちゃくちゃ優しかったんですよ。蜷川さんはひとつひとつ丁寧に指導してくれました。
僕は、『演技は楽しくない』ってずっと思っていたけど、演技とはなんぞやっていう、極意みたいなものを蜷川さんが教えてくれましたね」
そう話す川村だが、彼にはひとつ心残りがあるという。
「唯一の心残りは蜷川舞台に出れなかったこと…。一度は舞台に出てみたかったなと今でも思いますね」