夫婦別姓採用は95カ国・地域

選択的夫婦別姓の導入を求める集団訴訟の弁護団が今年2月に公表した調査結果によると、姓の制度内容を確認できた95カ国・地域すべてで、夫婦別姓を導入していたことがわかった。

内訳は、95カ国のうちフランスや韓国、中国などの33カ国は夫婦別姓を原則としており、残りの62カ国は夫婦同姓と別姓、どちらでも選択ができるという。

特に女性差別に関する意識が高まった1970年代以降、別姓を認める国が増えていき、アメリカでは1976年に夫婦同姓を義務付けていた最後の州・ハワイ州が別姓の選択が可能となった。

その後もスウェーデン(1983年)、フィンランド(1985年)、ドイツ(1994年)、タイ(2005年)、オーストリア(2013年)、トルコ(2015年)など続々と別姓の選択が可能になり、夫婦同姓を義務付けているのは現在、日本だけという状況となった。

弁護団は「日本は世界から取り残されている。婚姻前の姓を保持することは、自己決定権の一つであり、国際的には人権として確立されている。選択的夫婦別姓は世界的な潮流であり、日本でも早期に実現すべきだ」と訴えている。

しかし、導入を巡り障壁となっているのが、日本古来からの家制度だ。

「日本の保守層の一部には、明治以来の日本の『家制度』への固執もあり、夫婦別姓に対して違和感を覚える人も多いです。別姓制度導入の言及を控えることは、保守層から集票を行なう政治的な意図もあるでしょう。実際、昨年の総裁選で小泉氏が敗れたのも、選択的夫婦別姓の導入を訴えたことで、地方票が取れなかったことが大きいという見方もできます」

では、導入が実現するために必要な課題とは何なのか。

「地域によっては、いまだ男尊女卑的な慣習を持っているところもあります。そうしたところでは夫婦別姓に対する抵抗感があり、導入を押し通すと地域社会の軋轢を生む可能性もないとは言えません。別姓を選択した夫婦がいても、基本的に同姓や家制度を守りたい人にはあまり影響がないという認識を浸透させていくことが重要となってくるのではないでしょうか」

現在の日本では、婚姻した夫婦の9割以上が夫の姓を選択している。古来の家制度を守るべきか、個人の尊厳を重視すべきか、十分に議論を重ねる必要があるだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部

桜木町で演説する小泉進次郎氏(写真/本人facebookより引用)
桜木町で演説する小泉進次郎氏(写真/本人facebookより引用)